第12話 閲覧した内容とログデータ


 せっかくなのでユリアに道案内をしてもらい大聖堂まで来た。

 なので、途中道に迷う事もなければトラブルに合う事もなかった。


 大聖堂についてからもユリアのおかげでスムーズに中に入る事が出来た。

 むしろこれなら権限を借りる必要がなかった? という心の声には無駄ではないにしろ少し申し訳ない気持ちにさせられた。


 ここである事に疑問を持つ。


「もしかして大聖堂って事はここの主はマリア?」


「そうよ。ここはマリアが管理する大聖堂。そしてマリアに今最も近い存在となったカルロスがいる所でもあるわ」


 ゲームで言う敵のアジトに来たと言うわけか。確かに敵の事を知るには敵の内部に入り調べる事が一番手っ取り早く正確だが顔も名前すらバレている者が変装の一つもせずにここに来るのはどうなのかと思う。流石に背後から刺されたりとかはしないだろうがそれでも少し怖い。


「一応聞くけど、今朝みたいにいきなり戦闘になったりは?」


「多分ないはず。カルロスはともかくマリアは蓮心をギリギリまで護ろうとしているから」


「なら良かった」


 そのままユリアの後ろを付いて行く。とても大きい大聖堂だったがユリアは迷う事なくどんどん奥に入っていく。ランクEだからかは知らないが途中すれ違う人々の視線が刺さるように痛かった。

 ユリアは曰く、ここに入るだけでも最低でもCランクはいるらしい。


 すると、ユリアが大きい扉前で立ち止まる。

 それからゆっくりと扉を開け、誘導してくる。


「どうしたの?」


「中に入って。ここにカルロスについて書かれた書物がある」


 言われた通りに中に入ると、ユリアも中に入り今度はすぐ扉を閉めた。周囲を見渡してみると書物が置かれた本棚が沢山ありとても静かだった。そもそも今ここには見える範囲では二人しかいない。


「こっち」


 ユリアが歩き始める。

 ここで一人になれば迷子になりそうなぐらい広かった。

 例えるなら市の図書館をイメージさせる広さ? かな。

 ユリアとはぐれないように注意して付いて行く。

 しばらく歩くと更に奥に一枚大きな扉があった。


「我、ユリアの名の元に命ずる。今こそ閉ざされた扉を開け」


 ユリアが扉の前で何か呪文みたい物を唱えると、重たそうな扉が音を立てて開く。


「これ、俺一人じゃ絶対無理だったな……」


 あまりの驚くべき光景の連続につい心の声が漏れてしまった。

 恐らく中に入るのにCランク、さっきの大きな扉を開くのにAランクもしくはBランク。そしてこの扉を開くのにAランクはいるのかもしれない。確証はないが、見てた感じなんとなくそうなんじゃないかと雰囲気的に思った。


「さぁ中へ」


 まだ奥があるのかと思いつつも中に入る。

 周囲の状況としては空気が重たく独特な雰囲気だった。

 何もないはずなのに常に気を張り警戒をしておかないと取り返しのつかない事になりそうな感覚そう言った類の物だった。


 すると、今度は蓮心の居た中学生の時に使っていた教室分の広さしかない部屋になっていた。そして、壁際に設置された本棚からユリアが本を取り出し渡して来た。


「これよ」


 厚さは三センチ程に茶色表紙の本を受け取る。

 タイトルは【SOULBOOK】とよく意味が分からなかった。

 意味的には魂の本と言った所だろうが。


「読んでもいい?」


「えぇ」


 近くに合った椅子に腰を掛け、ユリアから渡された本の中を見る。


 カルロスのステータスは、「職業:剣士」「ランク:A+ランク」「特殊攻撃、通常攻撃、魔力、スピードAランク、特殊防御、通常防御:Sランク」「所属:ソロ」と何ともチート級の化け物だった。Sランクが完全に運要素を含むならばそれ以外はマリアが決めたと言う事だろう。これだけでも少し頭が痛くなった。どうやらこの世界ではAランクとA+ランクは基本的にAランクという一括りで基本的には表現されているらしい。ただしAランクでもSランクに近い者に+を付けることでその者の階級を現しているようだ。他の階級も同じだ。ただしこれはEランクにはあてはまらない。Eランクはどんなに頑張ってもEランクらしい。+は付かない。なんとも理不尽な世界じゃないか。全てが終わったら覚えてろよ、この世界。この俺が下剋上をしてや……いえなんでもありません。気を取り直して本題の本を読んでいく。


 カルロスの前いた世界での出来事等も書かれていたが今回に限っては関係なさそうなので流し読みする。他には転生時のスキル一覧があった。注意して見ていくとある事に気づく。


 カルロスは転生の時に『EX(エクストラ)固有スキル:魔法隠蔽操作』を獲得していた。詳しくは書かれていなかったが魔法隠蔽操作とは模倣や対魔法攻撃のように相手の魔法を解析する魔法を全て無効化すると書かれていた。これであの時、ユリアの魔法が模倣でき、カルロスの魔法が模倣出来なかったのかが説明された。


 てかそれほぼチートじゃん。

 だって自分の力を真似されないって事は言わば俺みたいなインチキチート野郎を成敗するのに適任……ん?

 これじゃ俺がズルした悪役みたいになってないか?

 これ本当に大丈夫だよね?


 少し不安になりながらも、さらに本を読んでいくと、

『カルロスはマリアの事を好きになった。そしてマリアを己の物とする為に強くなった。元々転生者同士と言う事もありマリアとカルロスはすぐに仲良くなるが次第にカルロスはマリアに対して特別な感情を持つようになった。それがカルロスの強さの秘密である』

 と、書かれていた。


 二人の似た境遇が今の二人を作りだしたと言う訳か。そもそも魔法を習得すれば転生者が転生者を召喚する事にも驚きだったがとりあえず話しが脱線する前にそれは棚に上げて置く。


「実はマリアも転生者でカルロスはそんなマリアに気づけば恋をした。ただその恋愛感情が間違った方向に行った訳か」


 これだけ見ればまだ救いようが合るわけだが。

 文章はまだ続いていた。


『恋に落ちたカルロスはある日、豹変しパーティメンバーの二人を殺しマリアを自分だけの物にしようとするが同じパーティーにいたユリアに抵抗される。恐怖し泣き叫んでいたマリアを護る為に戦っていたユリアにもとうとうカルロスの最後の一撃が向けられる。その時、マリアがカルロスの婚姻を承諾した事によりユリアの命は救われカルロスの恋は実るのであった。しかしマリアが婚姻の条件として気持ちの整理に一週間の猶予が欲しいと言ってきた。カルロスはそれを了承する。そこからマリアは自身に残った力を使い周囲に助けを求めるがカルロスはそれを全て一人で対処する。流石のカルロスもこれでは埒が明かないと判断し結婚式当日までなら誰の決闘でも受けると宣言する。そして結婚式が無事に終わった後の反論異論は認めないと宣言した。これによりマリアの救出作戦である『緊急任務:女神マリアを救え』が出現した。カルロスのログデータから作成』


 と、書かれていた。

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