8・DNA鑑定と進化とレイプ冤罪

 と ある 婦女暴行事件、つまりはレイプ事件でのこと。

 俺は容疑者になりました。

 で、そのさい 体液、つまり 身も蓋もない言い方をすると、ザーメンのDNA鑑定を行うことになった。

 そのやり方は、俺の血液を採取する、ではなくて、オナニーさせて精液を出させるというやりかた。

 繰り返そう。

 お巡りさん様たちが見ている中で、公開オナニーさせて、ザーメンを採取する。

 もういっぺん繰り返そう。

 公開オナニーして、ザーメンを採取する。

 マジで。



 俺は初めは当然 断ったんだけど、



 お巡りさん様は言いました。


「やらないのは犯人だからだ! 有罪だ!」



 と、十人のお巡りさん様たちに ガンガン責め立てられて、泣きながらオナニーした。

 マジです。

 で、お巡りさん様はそれを見て、

「おいおい、こいつマジでオナニーしてっぞ(笑)。やっぱレイプ野郎はイジョーシャなんだな www」

 哀れな俺は、お巡りさん様たちの笑いもの。

 エグ エグ、恥ずかチーよー。



 で、採取したザーメンでDNA鑑定がされたけど、一致しなかった。

 繰り返そう。

 一致しなかった。

 つまり犯人ではないと分かった。

 しかし、しかしだ、お巡りさん様はそれでも俺を犯人だと断定した。

 理由は、

「レイプしたときに進化が起きてDNAが変化したに違いない。だから一致しなかったのだ」

 ……

 うん、意味わかんないよね。

 繰り返そう。

 レイプしたときに進化が起きてDNAが変化した。

 ……

 やっぱり意味わかんないよね。

 だから もう一回繰り返すね。

 レイプしたときに、進化が起きて、DNAが変化した。

 ……

 いや、何回 繰り返しても理解できねぇよ。

 でも お巡りさん様たちは自画自賛した。

「俺たちは科学的 大発見をした。これで多くの犯人を有罪にできる。我々はなんて凄いんだ」

 マジで。

「貴様はレイプを繰り返す異常生物になったんだ!」

 と まで言った。

 つまり俺は人間ではなく、レイプをする別の生命体になりましたとさ。



 で、裁判が行われたんやけど、不幸中の幸いで有罪には至らなかった。

 裁判官がアホらしさを見抜いたからではない。

 裁判官はお巡りさん様の発見を賞賛していた。



「すばらしい発見だ。学術的歴史に刻まれるでしょう」

 うん。

 裁判官も俺のことを人間じゃなくなったと思ったわけね。



 でも 有罪にはできなかった。

 他の人が先に有罪になったから。



 で、俺はからくも無罪になったわけなんだけど、これで終わらなかった。

 なにせ、お巡りさん様たちの前で公開オナニーをさせられた。

 で、それは録画されて、色んな所に公開された。



 お巡りさん様は言いました。


「疑われるのは、もとからそういう奴だからだ。こいつの危険をみんなに知らせるんだ」



 と いうことで、近所や その地区の学校や 店とかに、俺のオナニー画像を公開して、性犯罪予備軍として知らせた。

 当然、物凄い個人攻撃にあった。

 近所の人間は 「街から出て行けー!」 攻撃をする。

 周辺の小中高の生徒は俺の家に襲撃にかけて暴れ回り大騒ぎする。

 店とかは、例えば近所にパスコってショッピングセンターがあるんやけど、そこからは不売運動が起きて、俺には商品を買わせないと言うことになった。

 おかげで買い物には物凄い不便なことになった。

 引っ越したいけど、金がないから無理だし。



 で、そういう個人攻撃は長いこと続いたんだけど、と あることで 一応は止まった。

 俺の前に捕まって有罪になった人。

 その人も冤罪だったことが分かったから。



 っていうか、なんで 俺や 冤罪になった人が容疑者に上がったのかっていう謎がある。

 ちょっと考えれば分かることなんだけど、俺もその人も冤罪なわけなんだから、捜査線上に上がること自体 あり得ない。

 容疑者になること自体 不自然なわけだ。

 じゃあ、なんでかって言うと、キモオタだから。

 俺もキモオタだけど、冤罪になった人もオタクだった。

 なんか 当時 流行っていた美少女マンガを全巻コレクションしてたとか。

 で、担当刑事は、事件の前から その人に目を付けていて、いつかなにかやらかすに違いないと思っていた。

 で、レイプ事件が起きたので、



「あの野郎! ついにやりやがったな! 逮捕だ!」



 というノリで逮捕しましたとさ。

 で、俺の時と同じノリで有罪。



 そんな感じ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る