第40話 座卓が無いって何か不便

慧仁親王 堺 1522年


 ん〜、小腹が空いた。小腹空いたよ〜。ドラ……宗柏〜。


「弥七、宗柏を呼べ」

「御意」


 ゴロゴロしていると、宗柏がやって来る。


「じい、牛の乳は有るのか?」

「取り寄せれば有ります」

「取り寄せてくれ。きな粉って知ってるか?」

「大豆を挽いた物で宜しければ」

「そうだ。蜂蜜は?」

「ご用意しております」

「お〜、じい大好き」


 と、抱きついてギュッとする。サービス、サービス。


「米を挽いて米粉の団子を作って茹でてくれ。それを冷水に取って良く冷やしたら水気を切る。それを器に盛って、きな粉と蜂蜜と一緒に持って来て、お茶と一緒にね」

「畏まりました」


 ゴロゴロゴロゴロ、座卓って無いのかな?


「弥七、座卓って無いのか聞いて来て」

「座卓ですか?座卓って何ですか?」


 見回すと誰一人として知らない様子。


「えっ?誰も知らないの?」

「は、勉強不足でして」

「いや、知ってるいと思った俺が悪いんだけど、そうか、知らないのか。ん〜……」


 番匠ならチョチョイのチョイで作ってくれるだろうけど、呼ぶのも行くのも面倒だな。今度でいいや。


「ごめん、今度で良いや」


 ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ。


「お前達も、隣の部屋で休んでて良いよ。用が有ったら呼ぶから。下がってて」


 ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ、くぅ〜。


〜・〜


 はっ!寝ちゃった。どれくらい経ったんだ?本格的にお腹が空いたぞ。


「弥七!」


 ……?そ〜っと襖を開けて隣の部屋を見ると、皆んなが寝てた。おい、こら、忍者!お前は察知しろ!


「弥七!」


 声に反応したのか、目がパッチリと開き、ゆっくりと此方に顔を向けると、俺と目が合う。すぅっと起き上がり、此方に向き直り片膝をついて頭を下げる。


「はっ、こちらに」


 何、寝てたのを無かった事にしようとしてるんだよ。今、寝てたよね。まあ、疲れてたんだろうから良いんだけどね。


「さっき頼んだ白玉が出来てるか聞いて来て」

「御意」


 弥七が部屋を出て行くタイミングで、行雅も言継も起き上がり、平伏をする。


「ああ、もう、良い。休んでおけ」


 弥七が宗柏を連れて戻って来る。


「先程お持ち致しましたが、気持ち良さそうに寝て居られましたので、起こさずに下がらせて頂きました」

「うぬ、それで、白玉は出来たのか?」

「はい、ただ今用意してお持ちしている所です。おっ、こっちに持って来ておくれ」


 お膳に載せられ白玉が運ばれて来る。白玉にきな粉と蜂蜜を贅沢にかけて食べる。


「美味しい、美味しいよ。其方も食べてみろ。宗柏、おかわりだ」


 きな粉に持って行かれた水分をお茶で補いながら、話しを続ける。周りでは『美味い』の声が聞こえて来て、小さくガッツポーズ。


「じい、座卓って聞いた事あるか?」

「いえ、聞いた事有りません」

「そうか、行雅、黒板と白墨。あ、ごめん、食べてからで良いよ」


 白玉を食べて、座卓の説明して、作って貰える様にお願いしました。

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