第20話 一旦、整理しよう

慧仁親王 大坂城 1522年


一旦、整理しよう。

俺はこの時代に逆行転生した。

後柏原天皇の孫、後の後奈良天皇の第二皇子、正親町天皇の弟、後の天台座主覚恕の兄弟。

朝廷は貧乏で影が薄い。

世の中は応仁の乱から続く戦乱で疲れ果てている。

影響力が落ちた足利幕府が有った。


「三好殿がお見えになりました」

「うぬ、入って貰え」

「失礼致します」

「弥七、お茶お願いね」

「御意」

「元長、先に言っておく。会話は礼を欠かない程度で話してくれれば良いからな」

「御意に」

「少し現状を頭の中で整理していた」

「はい」

「まず必要な事は長期目標だ。 元長は何を目指してたんだ? 何の為に政の実権を握ろうとしていたんだ? その先には何が有ったんだ?」

「幕府が無くなった後に、よくよく考えてみました。 やはり実権を握るのが目標だった様に思います。 その頃の私の目には、実権を握った人が輝いて見えてた。 錚々たる面々が傅く(かしずく)のです。 そこが栄達の極みと思っていました。 実権を握ったその先を考えた事が無かったのではと思い至りました」

「うぬ、それで良い。その先をどうするか、一緒に考えてくれ。 俺の第1目標は貧乏な天皇家を救う事だった。 これはなかば叶った。 実はな、俺は天照大御神様に連れられ、この先を見て来たんだ。 この戦乱を収めるのは、俺と同じ世代の男達だった。 この戦乱の悲惨さを見て育った世代だ。 そしてその男達は口々に同じ言葉を言った。 民の為にこの戦乱を終わらせたい。 民に腹一杯食べさせたい。 民の笑顔が見たいと。 でも、その男達は自分から戦を止めようとしなかった。 話し合おうとしなかった。 元長、何故だと思う?」

「自分が頂点になりたかったからですか?」

「うぬ、その通りだ。 だから俺が立った。 こんな事はやりたく無かった。 笑えるな。 頂点に立ちたく無い男だからこそ、この戦乱を止められると思わぬか?」

「殿下はこの戦を終わらせた後、如何するつもりですか?」


北条に話した通り、象徴天皇、道州制について話をした。


「そこに殿下は居ないのですか?」

「いや、今、一生分の仕事をして、事が成った暁には、天照大御神様から授かったこの知識を広めるべく、全国を周りながら農業指導や漁業指導、産業指導をしながら、のんびり人生を送りたいと思ってる」

「ホント、2歳ですか? 可哀そうに、今だけは天照大御神様を憎く思います」

「ありがとう。 でもな、俺以外に適任者は居なかったんだよ。 生まれながらに実態の無い権力を持った、自由に動き回れる男が」


ちょっと熱く語りすぎたか?

最後、ちょっと哀愁を帯びてなかったか?

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