第18話 月にかわってお仕置きよ

慧仁親王 大阪城 1522年


やっと大坂城に帰って来た。

やはり、まだ2歳の幼児。 身体への負担が半端ないです。

しかし、おもう様の践祚せんそまで後4年。

史実の様に、即位の礼を10年も待たせる訳にはいかないのだ。

と、一昨日までは思ってました。

1万貫有れば、きっと即位の礼だって出来る。

早く帰ってしかにギュッてして貰って褒められたい。

いつもの様にゴロゴロと、部屋を行ったり来たりゴロゴロしている。


「雅綱〜、元長まだ〜?」


転生者は身体に慣れてくると、幼児退行する事があるって、なろうで読んだ。

まさか私がなろうトラップに……嘘です。 ただの末っ子気質です。


「弥七!居るか?」

「はっ!」

「お腹空いた、おにぎり食べたい」

「ただいま」

「雅綱と弥七の分もね」


弥七が泣きそうな顔で振り返る。

だよね、そうだよね。 乗馬はお腹空くもんね。 元長が来ると思って頑張って帰って来たもんね。

一緒に食べようね。


「殿下、三好殿が参られました」

「うぬ、ここへ」


すると、元長は1人の少年を連れて入って来た。


「三好殿、昨日は約束を違えて申し訳なく思っている。 済まなかった」

「いえ、出る前にご連絡頂いたので、お気になさらず」

「うぬ、で、こちらの童は?」


ふっ、あからさまにムッとしてる。 お、でも気を取り直した。


「細川京兆家当主、細川晴元で御座います」

「ほう、京兆家とな。 三好殿、分かって連れて来た、それで良いのか?」

「はっ」

「では晴元、細川京兆家の取り潰しを言い渡す」

「えっ」 元長を振り返る。

「領地は和泉国以外はそのまま三好元長、其方に預ける」

「元長、おのれ、その方!」

「三好殿、晴元は其方に任せる。 養子にでもしてやれ。 俺が死ぬまで家の再興は許さん。 俺が死んだら好きにしろ」

「はっ、ありがとうございます」

「晴元、この長い戦、何人の民が死んだ? 農民だけじゃ無い、武士もだ。 誰かが責任を負わなきゃならない。 三好殿には話したが、足利、細川、畠山、山名、斯波。 始めたんだ、責任を取らなきゃな」

「……」

「細川京兆家、再興させたければ、天下安寧に手を貸せ。 死にもの狂いでな。 ギリギリ助けられたんだ、三好殿を決して裏切るなよ、分かったな」

「はい」

「では、三好殿と話があるから下がってくれ。 弥七! その握り飯を置いていけ。 雅綱と弥七は晴元と握り飯でも食べて来い」


パァっと口元が綻ぶ弥七。


「御意に」


下がる3人を見送り、元長を近くに呼ぶ。


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