第27話 援軍

この事件を担当する刑事達は、YouTube用の動画を撮影していたことを僕が認めたことで、一気に自白を得られると期待していたようだ。その証拠に僕が殺人を否定すると、あからさまにがっかりした表情を見せた。

「何をいまさま。お前がやったんだろ」

真田刑事がデスクを叩いて僕を睨んだ。


取り調べはゆうに3時間を越え、刑事達の口調はだんだん荒くなってきた。しかし、僕は犯人ではない。やってないことはやってない。否定するしかないのだ。それでも刑事達の尋問は続く。

「深夜0時ごろ、お前はどこでなにをしていた?」

「バカにされて頭にきて、殺したんだろ」

「未成年だし、自白して反省すれば刑期は短くしてもらえるかもしれんぞ」

しかし、僕は所謂「刑事慣れ」をしてしまったのか、この状況を楽しむ余裕さえ出てきた。僕は刑事達から目を逸らすことなく、質問に冷静に答えていく。

「深夜0時ごろは、自分の部屋にいました」

「頭にきたことは認めますが、殺していません」

「自白するもなにも、僕がやったことと言えば、動画を撮影していたことだけですよ。それで刑務所に入れられてしまうのですか」


このように取り調べは前進せず、ついに夜を迎えてしまった。しかし、ここにきて思わぬ出来事が生じた。取り調べ室で、真田刑事が運んできてくれたカツ丼を黙って食べていたときのことだ。部屋の外が急に騒がしくなると、懐かしい声がこちらに向かって近づいてくる。

「モーちゃんに会わせろ!」

「ひかるは無実だ!」

「無実の高校生を何時間も拘束するな」

間違いない。鉄道研究会の連中だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る