その夜猫、人見知りにつき

 最近、夜猫を飼った。


 夜にならないと現れない、妖精みたいな黒猫。

 だけどうちの夜猫は、夜になっても現れない。付けた名前で呼んでも駄目。逃げたのかと思っても、お皿に盛った餌はいつも綺麗になくなっている。

 ペットショップの人に電話すれば、特別人見知りが激しい子なんですよと、謝罪と共に、今は見守っていただければとお願いされた。


 さて、どうするか。


 見守るっちゃ見守るけれど、いつまでもこのままなのは嫌だ。末長いお付き合い、仲良くやっていきたい。

 色々策を考えるけれど、せめて一月、様子を見守ろう。一月経ったら実行だ。

 そんな風に考えて、とある夜。布団で横になっていたらお腹に何かが乗っかる。重い、すごく重い。薄く瞼を開けると、

「……ぷに」

 ちょっとふてぶてしい感じの、大きく丸い私の夜猫と微妙に目が合う。

「……っ!」

 こんなことは初めてだ。だからうっかり「■■■」と名前を呼んで──瞬きの間にいなくなられた。

「……」

 夢かなと、強めに頬を叩いたら、痛いだけだった。


 私に慣れてくれるまで、あと百日。なんてね。

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