第14話 魔法の箱

 箒とちり取り。乾拭き用の要らないタオル。掃除用具はこれだけだ。

「空気清浄機が欲しいわね。モンスターマシンを置くとしたらだけど」

「使って無い割には埃はほとんど無かったな。誰かがナニにでも使ってたか?」

「エロい推理ね、孝一君」

「でも、ロマンは有るよな。親父も学校でした事あるとか言ってたし」

「素敵なお父様ね。相手は誰だったのかしら……」

「……普通引くと思うのだが?」

 加藤紬はエロにだいぶ寛容だ。ほとんど男子中学生かと思うほどエロにガツガツしている。

「ツムちゃんは昔からエロに目が無かったものね」

「えぇ、恐怖心を払拭するには仕方なかったの……」

 どうやら両親の夜の営みを見た事があるらしい。当時は恐怖しか感じなかったが、逆に恐怖に打ち勝つべく独学で営みの謎を解いたらしい。無駄なガッツ。

「勘違いしないでね。姉妹でこんなにエロにオープンなのは私だけだから!」

「うん。聞いてないから言わなくていい」

「孝一君に隠し事したくないのよ」

「少しは隠せ、探す気が失せる」

「それは盲点だってわ!」

 開け透けて付き合いやすいが異性として意識しずらい。それが楽ならこのまま続けてもいいのだが、加藤紬の別の一面も見てみたいと思うのは好奇心だろうか?

「この学校Wi-Fi通ってるのかな? 当然の様に職員室には有るんだろうけど」

「ああ、通ってるぞ。職員室限定だが」

「そこから中継器で引っ張れない? どう思う?」

「いや、廊下に中継器があったら不自然だろ。独自ルートを確保したいね。出来れば有線で」

「Wi-Fiって偶に遅くなったりするもんね」

「物理的に繋がっている方が安全だと個人的に思う。サイバー攻撃も物理で切れるし」

「パソコンって電気無ければただの箱だものね」

「魔法の箱は冷蔵庫で十分」

「なにそれ?」

「いや、ウチのバーちゃん未だに冷蔵庫に入れてれば腐らないと信じきっていてな、偶に化石が出てくるんだ」

「化石?」

「五年前のベーコンとか謎の瓶詰めとか高野豆腐になった元豆腐とか」

「それは家庭の食卓に上がらないの?」

「母親とバーちゃんの使ってる冷蔵庫が違うからそれは平気」

「仲悪いの?」

「いや、ウチに冷蔵庫が六個有るだけだと思う」

「待機電力がやばそうね」

「家が無駄に広いし、親父の個人冷蔵庫とかあるから電気代は見て見てみないフリするしかない」

「大きな家だったわね。お目当ての子に会えたから私的に、満足だけど」

「ツムちゃん君の実家行ったの? なんで?」

「私が目を付けていた捨て猫が孝一君に拾われたのを偶然見ていてね」

「ほぼ初対面で好感度が上がってたのはそのせいか」

「そお云う事。色っぽい理由じゃなくてごめんね?」

「むしろ謎が氷解して一安心しているところだ」

「その猫なんて名前なの?」

「「ポテチ」」

「猫にポテチっておかしくない?」

「言われてるぞ、紬さん」

「私の家は甘い名前の犬が居るから猫は塩系にしたかったのよ」

「ウチの家族は捨て猫が紬さんにポテチと呼ばれて鳴いた事に驚愕していたぞ」

「それは驚くと思う」

 家族は夕飯に誘ったのだが紬が

 

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