第5話 規格外の力

 アトラスはエドワードと共に、ダンジョンへと潜っていく。今回のダンジョンは、ポピュラーな迷宮型のダンジョンだった。

しかし、そのランクはAランク。通常Aランクダンジョンを二人で攻略するのは並大抵のことではない。アトラスはエドワードの足を引っ張ってしまわないかと不安になる。

 二人はおしゃべりすることもなく、淡々とダンジョンを進んでいく。

 しばらく歩くといきなりAランクモンスターが現れた。

「ウォーウルフですね」

 赤く光る目が特徴的なモンスターである。高い攻撃力を持つ強力な相手だ。

「さて、君の力を思う存分、見せてもらおうか」

 エドワードはアトラスにそう言う。

 アトラスは前衛。ゆえに、自らウォーウルフへと飛び込んでいく。

「――はあぁッ!」

 一応アトラスから先攻する。しかし、その一撃はAランクモンスターの防御力の前に弾かれる。逆に、ウォーウルフはカウンターで鋭い一撃をアトラスに食らわせた。

「――ッ!!」

 アトラスのHPは、ウォーウルフの一撃で一気に削られる。

 だが、次の瞬間、

「――――“倍返し”!!」

 アトラスが受けた攻撃の二倍の攻撃がウォーウルフに跳ね返る。

「グぁぁぁぁぁッ!!」

 Aランクモンスターの攻撃。それが倍になって跳ね返ることで、ウォーウルフの決して少なくないHPは全て削られた。断末魔とともにウォーウルフは倒れ込む。

「攻撃を受けたら相手にダメージを与えられるのか!?」

 アトラスの規格外のスキルに、エドワードはまたしても驚かされた。

「“倍返し”は、攻撃も二倍にして返せるんです。攻撃を受けないとまともに反撃できないんですけどね……」

 アトラスは少し自嘲気味に言う。この「一度攻撃を受けないといけない」という特性ゆえにHPがすぐに削られてしまい、ポーションでの回復が必須だった。だから≪ブラック・バインド≫では「金食い虫」扱いされていたのだ。

 だが、熟練した冒険者であるエドワードの意見は、≪ブラック・バインド≫のトニーたちとは違うものだった。

「HPがSランクで、相手の攻撃を倍返しにできるということは、ほとんどの敵に負けないということじゃないか」

 確かにアトラスと一対一で戦った場合、相手は常にアトラスに与えた倍のダメージを受けることになる。ということは、アトラスの二倍以上の体力を持っていないと自分も倒れてしまう。

 そしてアトラスの体力はSランク。体力でアトラスに敵うものはほとんどいない。なので、アトラスは一対一の戦いではほとんど負けないのである。

「まぁ確かに……タイマンならほとんど負けないですね」

「とんでもない規格外の力だ」

 王国一番のギルドのギルマスにそう言われると、少しは自信を持ってもいいのかなという気になるアトラスだった。


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