結界術師になりました。

カロ。

第1話 よくある?転生

1.よくある?転生






目が覚める。不思議な感じだ、まだ夢の中にいるような感覚。だが夢ではないとなぜか理解できる。

瞼をゆっくりと開くと視界には綺麗な芝生が見える。


あれ......?おかしいな。

いつも俺が寝てるベッドからは白い壁かPCを置いている机がみえるはずなのに。


異常な事態のはずだが、まだ夢心地の気分でボーっとする。

やはり夢なのだろうか......


!?

そうだ、俺は。



異世界に転生したんだ。




◇  ◇  ◇  ◇




生ぬるい風、人のざわめき、すれ違う人の香水や料理店の換気扇から出てくるにおいが混ざった風が頬を撫でる。


仕事帰りの夜20時頃。遅いわけではないが、早いわけでもない仕事終わり。少しだけ残業して帰る、いつも定時には帰れない。そんな仕事をする毎日だ。


家に帰ってから、いつも見ているゲーム実況動画の続きをみながら食事をして寝る日々。

代り映えのしない日々のはずだった、その日までは。



前から男が走ってくる。黒のニット帽にマスク、身長が俺よりも高いのは分かる。

なにをそんなに急いでいるのか、漏れそうなのか?

そんなことを考えながらもよけることもせず歩いていた。



ドスッ



胸が焼けるように熱くなる。


「うっ……」


なんだ、なにがおきた?


視線を落とすと胸にナイフが刺さっていた。

ありえない状況に思考が乱れる。その間にも胸からはどくどくと赤い血が流れていて、俺はそれを眺める事しかできない。


そして察する。

あーこれは死ぬな......



キャァァァァー



女性の叫び声が聞こえる。

通り魔で死ぬだなんて思ってもみなかったなぁ。

重くなった瞼が徐々に視界を遮っていく。ゆっくりと閉じる視界には俺の事を刺したであろう男が逃げていく後ろ姿が見える。


そしてそのまま意識がなくなっていく。

まぁいいか…家族も友達もいない身だ、悲しむ人もいないだろう。


そうやって俺はこの世界での人生を終えた。




◇  ◇  ◇  ◇






気が付くと部屋にいた、12畳ほどだろうか。

落ち着いた明るさの照明に、暗い色で統一された家具。

目の前には6人ほどが座れる机がある。暖炉からは火で薪がはじける音が聞こえる。



「いい部屋だな。」

思わず呟いていた。


俺が住んでいたのはよくある1ルームで殺風景な部屋だった。家具をいれるスペースも無く、布団と机を一つ置けば残りは服などでまわりがいっぱいになる。

こういったシックな部屋に憧れてはいたが、ついぞそんな機会は訪れなかったな。



「ははっ、ありがとう部屋を褒めてくれて。気に入ってくれたかな?」


声がしたほうを見ると少年がいた。歳は12~14ぐらいか?古代ローマの人が着ているイメージがある布1枚で作られたような服に腰ひも、無駄な装飾は無くかなり質素だ。

そんな服装がこの少年には似合っていた、何て言えばいいのか、雰囲気?貫禄?そういった物がこの少年にはあった。



死んだと思ったら部屋にいて、少年がでてきた。これは......



神様か?



「あまり驚かないんだね、うん。君から見れば僕は神様かもしれない。実際には君がいた世界の管理はしてないから、別の世界の神様だね。」


別の世界...異世界か。異世界の神様のところに来たということは、そういうことだろうか?


「話しがはやいね......たまに君みたいにくるんだよ、魂だけが飛んでくることが。そのために作ったんだよこの部屋は。とりあえず座ろうか?」


そう言って苦笑い気味に笑った神様は座る様に促してきた。逆らう理由もないので大人しく対面の席に座る。


それに俺みたいに、か。過去にもどうやら異世界にいった先人たちがいるらしい。



「どうなったか気になるかな? ははっ身構えなくてもいいよ。今まで来た人たちには選らんでもらったんだ、このまま輪廻の輪にもどるか。転生するかをね。」



なるほど、選ばせてくれるのか。どんな世界なんだろう?



「僕の世界はね、君にわかりやすく言うと。剣と魔法のファンタジーだよ。魔物がいてスキルがあって。時代は君のところの中世ほどかな? ここに来る人に話すたびに言われるけど。テンプレってやつだね。」


テンプレ世界か、いいね。そして今までスルーしてたが普通に心読んできてるな。


「まぁ神様だしね?」


神様だしそんなもんか。


今更話すのもなんだしこのまま心を読んでもらおう。


「ふふっいいよ。それで、どうかな? 輪廻にもどる?転生する?」


輪廻か転生か。


気持ち的には転生したい、だが地球ではただの一般人だった俺に魔物がいる世界で生きていけるだろうか?サバイバルの技術は動画でみた程度しかない、生き物を殺したこともない。仕事で疲れ切っていて歳も、もう30過ぎだ。転生しても体力がないんじゃないだろうか?



ちらっ



「ふふっ言いたいことはわかるよ。なにか力がほしいんだね?」


さすが神様だ、話しがわかる。でも神様にとって俺を転生させるのってメリットがあるんだろうか?



「そうだね、少し説明しようか。僕の世界には地球にはなかった力がある。スキルや魔法。魔物を倒すことであがるステータスなんかもあるよ? たのしそうでしょ? でもね、僕の世界にあるマナが常に消費されているんだ。マナとは魔法をつかったり魔物が湧いたり僕の世界では消費され続けている物なんだ。 もちろんマナを生み出す龍脈はある。それでも追いつかないんだ。増え続ける人口。倒され、湧き続ける魔物。魔道具だったり魔法だったりで消費されるマナ。」



「そこで君達、別の世界からの魂だ。君達にマナを注ぎ込み世界に移す。するとしばらくは世界が保たれる。これが僕のメリットさ。」



直接マナを送ればいいのに。



「そう思うでしょ? ダメなんだ、僕の力は強すぎて直接送ると世界に穴をあけてしまう。だから、入れ物が必要なんだ。それが魂さ。だけど移動してすぐ死なれるとこまるんだ。君達の体が世界に馴染み、そして死ぬ。そのときに君達の魂からマナが世界に流れ出す。そのために力をあげるんだ。生きてもらうためにね。」



なるほどな、何年ほど生きれば体にあるマナってのは世界に満ちるんだ?


「そうだねぇ、人の一生ほどの時間が必要かな?」



ふむ、どんな力がもらえるんだ?



「そうだねぇ。基本はなんでもいいよ。不死の力とかじゃなければね。あぁそうだ基本パックの話しをしようか。力とは別に必ずあげる物さ。」



基本パック?異世界の言葉が通じるようになるとかかな?



「そう、言語理解に体の若返りだよ。」



若返りか、気持ちがどんどん転生によっていく。何歳ぐらいになるんだろう?



「15歳だね、僕の世界で成人とされる歳だよ。」



いいね。問題は貰える力か。



少し考えよう、どんな力がいいだろうか?魔法があるらしいし、魔法の力がいいな。


魔法で魔物を倒す俺。うん。いいね。

剣で魔物を倒す俺。うん。ないね。

魔物に近づきたくない、こわい。



魔法の力と言えば手から火だったり水だったりをだす力だが……つかいにくそうだ。応用もききにくい。


火で魔物は倒せそうだが、火事になりそうだ。

水で魔物を、どうやってたおすんだ?アクアカッター的な魔法か?

風ではどうだろう、ふむ。切り裂くかんじか?



うーん。



地球にいたころの気持ちで考えてみよう。

普段アニメや漫画もある程度はたしなんでいた。異世界にいったらなんて妄想もしていた。

応用がきいて使いやすい力......



結界術なんてどうだろうか?自分の身を守りつつ相手の動きを封じる力、戦闘を楽にできそうだ。

これから行く世界で結界術がどういったスキルになるか分からないが、神様がくれる力なんだしょぼいなんてことはないだろう。


うん、いいね。考えているようなことができるなら強い力になりそうだ。

そのへんはどうなんだ?神様



「いいんじゃないかな? 君の考えてることはできると思うよ。ただ練習次第だね。」



よし、なら神様。結界術でお願いします。



「わかった。それじゃぁ転生でいいんだね? えっと15歳ほどに若返らせてっと。言語理解に結界術に。場所の希望はあるかな?」



そうだな、まわりに人がいないところがいいな。能力の確認もしたいし、そこそこの魔物がいるところで。しばらくは一人でゆっくりしたい。



「疲れてるんだねぇ。わかったよ人がいないといっても、そんなに遠くにはしないでおくよ。そのうち人に会いたくなるだろうしね。」



さすが神様だ、なんでもお見通しか。



「それじゃ、いってらっしゃい。頑張ってね?」



あぁ行ってくるよ神様、チャンスをくれてありがとう。






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