じゅう

 我が物顔でミナトが部屋に居候し住みだして十日くらいが経過したある日。

「宅配でーす」

 頼んだ記憶のない宅配が届いた。

「ご苦労さまです」

 荷物を受け取り部屋に戻る。

「ミナト宛の荷物だよ」

「おー、届いたか」

 早速開封するミナト。

 入っていたのは数着の着替えや生活用品。

 定住するつもりじゃないよな……?

「そろそろ似たような服も飽きてきたでしょ?」

「入ってる服も大概似たような服だけど」

 即座に頭に手刀を入れられる。

「私にとっては違うんだよ、確かに似てるけど」

「と言うか、定住する気でしょ」

 ミナトは笑う。

「住むならもっと持ってくるよ」

「……追い出すぞ」

 出来ないくせに、と小馬鹿にしながら荷物を取り出すミナト。

「ちょっ、頼むから下着とかはせめて隠して!」

「いや、もう観念しろ」

 勘弁して。

「それとも、女の子として意識してる?」

「そりゃまぁ……意識はするよ」

 ふぅん、とその意識せざるを得ない下着を持って考え込むミナト。

「それなら良かった」

 何事もなかったかのように整理を再開するミナト。

 衣類ケースを買う日も近いのかも知れないけど……買ったらもう定住されそうで困るな。

「ダンボール、色々整理に使いたいから開けっぱでいい?」

「まぁ元々でかいカバンがあるんだから今更部屋が狭くなっても何も言わんよ」

 元々家具なんてそんなに置いてない部屋なんだから。

「あとは……あった!」

 荷物の中に埋もれてた物を取り出すミナト。

「ぬいぐるみ」

「見ればわかる」

 小さい頃からミナトが大切にしていたぬいぐるみだ。

 ミナトの家に遊びに行くたびベッドに鎮座し、ミナトはそれを抱えながら僕とよく話をしていた。

「と言う訳で」

「ただでさえ狭いベッドを更に狭くするおつもりで?」

 話すら聞かずにベッドにぬいぐるみを置くミナト。

「これでよし」

 良くない。

 そこまで大きいサイズでは無いにしろ、ただでさえ狭いシングルベッドに二人でなんとか寝てるのに。

 ……これ以上密着するハメになる。

「ぬいぐるみに奪われて寂しいのかー?そうなのかー?」

「違います」

 ……違わないです。

 こんな事言えないけど、本音を言うと。

 ミナトに抱きつかれながら眠るのは慣れるとかそう言う次元ではなく。

 とてもリラックスできて、凄い安心できて。

 一人じゃないんだって。

 確かに諦めきれない自分は居るし、未だに起きて情緒が乱れる時もあるけど。

 それ以上に、ミナトが居ると言う安心感の方が大きかった。

「せめてこれ以上は増やすなよ」

「善処します」

 そう言いながら二個目のぬいぐるみを引っ張り出してきた時、僕はもう何も言えないのであった。

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