厨子の意味とそれに込められた思いを忘れた時、村は報いを受ける

みなさんは、厨子というものを知っていますか? 仏像や位牌などを中に入れる仏具の一種です。

本作の大きな特徴のひとつに、舞台となる村の特異性が挙げられます。
そのうちひとつが、主人公志摩の実家を含めた六つの家でひとつの厨子を管理し、四年毎に次の家へと回していくというものです。

なのにひとつの家が、もうこんなのはやめにしないかと言ったことから村では不吉なことが起こり始めるのですが、村の特徴はそれだけではありません。
本家に分家、女性に対する感覚など、所々に前時代的ではとないかと思うような価値観が見受けられ、時には眉をひそめるような展開だってありました。

しかし現実でも、令和の時代になった現代でも、そういう価値観は、古い風習と同じく、そう簡単にはなくなったりしないのですよね。

迫り来る怪異に、村特有の閉塞感、漂う古い価値観。これらを聞けば、苦しいシーンの連続と思うかもしれません。しかし、そんな中でも清涼剤となりうるものはちゃんと存在します。それが、作品のタグにもちゃーんと書いてある、恋愛描写です。
志摩の親戚であり幼馴染でもある奏斗。彼もまた志摩と共に怪異に巻き込まれていくのですが、志摩が怖がるたびに、あるいは過去に起こった出来事に苦しむたびに、奏斗がそれを支えようとしてくれます。他にも、幼馴染の気安さからか、志摩の無防備な言動により、奏斗の理性が試されたり、奏斗の理性が試されたり、奏斗の理性が試されたりするのですが、その時ばかりは怪異よりも、二人の関係と奏斗のメンタルに注目せずにはいられません。

村を襲う怪異と、二人の恋。それぞれどんな決着をむかえるのでしょう。

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