エコアース(出動編)
対怪獣自衛軍赤糸市支部は、かつてないほどの大騒ぎになっていた。
前回赤糸市を襲った猫型の大怪獣による大災害。
怪獣出現時の対応が後手後手に回った上に、結局アストラマンに怪獣を倒されてしまったために自衛軍は大バッシングを受けていた。
そして今回、二週間も経たない内に同様の猫型大怪獣が出現し、自分たちの頭上を飛んでいった。
まだ被害が出ていないとはいえ、災害の傷が癒えない赤糸市民はこの怪獣の出現に恐怖している。
この怪獣を即刻倒すことが出来なければ、自衛軍のメンツに関わる。
自衛軍はいらない、アストラマンに全て任せておけばいいのだなどと言われては、赤っ恥もいい所である。
「という訳なので、頑張ってねぇ~」
「なんで初出動でそんなに圧力をかけて来るんですか!!」
自衛軍のヘリに乗り込んだコアスは、隣に座って長々と余計なことを言ってきた太良島のニヤケ顔を殴り飛ばしたい気持ちでいっぱいだった。しかし、状況が状況なのでグッとこらえる。
怪獣の出現から既に一時間が経過している。
山の中に逃げ込んだ怪獣を討伐するため、そしてこの間の怪獣災害に間に合わなかった新兵器の初陣のため、ヘリコプターに乗り込んだコアスは、全身のいたるところが赤や黄色に光る、機械的なスーツに身を包んでいた。
膝の上にのせているヘルメットや、体を包む大柄なスーツは、多少デザインに違いがあるものの、以前コアスが町中でPR活動を行っていたエコアースの物である。
「ここしばらくしっかり訓練しておいてなんですけどね、こんなので怪獣を倒せる気しないですよ」
「いやぁ、まあ最初だしねえ。戦闘機と連携して痛手を与えるとこまで出来たら上々くらいの気分でいいと思うなー」
「そんな力があったら太良島さんの頭かち割ったほうが早い気がするんですけど」
「まいったなー。」
「そもそも守りたいわけでもない人類のためになんで私こんなことしてるんでしょうね」
「自衛軍の隊員から絶対出ちゃいけない言葉だねえ」
「ってことを考えたときにね、原因太良島さんじゃんってなったんですよ。だから頭かち割ろうかなって」
「僕の分のヘルメットってどこに置いてある?」
コアスの減らず口にも、太良島は飄々とした態度で笑みを崩さず、さも愉快そうに答えてくる。そういうところが気にくわないのだと、いつもコアスは思う。
「さ、そろそろだよー。コンディションはいーい?」
今のバカみたいなやり取りで、緊張をほぐされてしまった。
結局、コアスはいつもこの上司の手の上で踊らされているのだ。
そこが嫌いなんだよ、と心の中で悪態をつきながらメットをかぶり、立ち上がる。
「いつでも行けます」
「よし、じゃあ地上班が到着次第、作戦開始だね」
暗闇の中だが、なんとか木々の間に怪獣が視認できる距離まで近づくと、ヘリはゆっくりと、木々をよけながら着陸を開始した。
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