負けヒロインを慰めていたら、クラス中の皆にバカップルだと思われていた件

@siromarutantan

修羅場

朝。高校まで歩いている途中だった。


 『やっぱそうですよね…私じゃ』


 角を曲がったところからそんな声が聞こえてきた。


 (告白か?こんな朝っぱらから)


 俺には無縁なことすぎてどぉでもいいと思っていまう。我ながら悲しい人生だ。


 (でも断られているのか?)


 角に隠れながら様子を伺う。そこにはいたのは3人の学生だった。


男子一人と女二人。


 (なんだ?修羅場か?)


 よくみると女のひとりは学年でも有名な黒髪美少女。芸能活動をしているなんて噂もあるくらいだ。


もうひとりは断られているほうで白っぽい青髪の…


 うちの制服を着ているからこの学校の誰かだとは思うがあんな美少女見たことがない。小柄な姿から察するに1年か?


 ついつい見とれていまうくらい可愛かった。


 『ちょっと!待って!』


 聞こえてきたのは黒髪のほうの声だ。


 どうやら男の方も青髪の手を掴もうとしているが、そんなのは無視して走り出す。


 (おいおいこっちくんなよ)


 なんで学校のほうに走っていかないで反対のこっちに走ってくるのかは不明だが小柄な女は下を向きながら走ってきた。


 下を向いていたおかげでどうやらバレずには済んだ。もしパれていたら何されていたか…


 角の向こう側にはもう誰もいなかった。


 (さて、そろそろ俺も行くか)


 数分後正門にたどり着いた。が、閉まっている。


 時計の針は8時32分を指していた。


 (マジかよ…遅刻じゃん)


 たまにこういうことはあったので校舎に入る裏道は知っていた。だがそのまま教室に行っても怒られるだけだ。

 (久しぶりに屋上にでも行くか)


 屋上は落ち着くからいいところだ。先生もめったにこないし、生徒は立入禁止。見つかることはまずないだろう。

 『す〜はー』


 たまにはこうして深呼吸をするのもいいな。喉に新鮮な空気が入り込んでくる。少し喉がくすぐったかった。


 そんなことをして暇を潰しているとドアがガチャと開いた。


 一瞬心臓が止まったかと思ったがそこに立っていたのは小柄な女の子。白っぽい青髪にもじもじして少し可愛らしい女の子が。


 『あ!さっき振られてた…』

 『み!見てたんですか!この変態!』


 『いや、たまたま聞こえちゃったの。だから不可抗力』


 あれ?普通に話せてる。

 俺こと河野洋介は女の子と話すどころか友達すらまともにいない、いわゆるボッチと言うやつだった。


 ましてはこんなに可愛い女の子と話すなんて何年ぶりだ?


 『それで、お前も遅刻と?』


 『仕方ないじゃないですか!』


 『俺はお前のせいで遅刻したといっても過言じゃないんだぞ!』


 このとき洋介は自分でもびっくりするくらい自分がリア充にみえていた。まさかな、この俺が。


 『過言ですよ!』

 『さっきっから敬語だけど何年生?あ、俺は2年』

 『私も2年生です』

 『え?いたっけ?』


 『いえ、今日転校してきました』


  確かに言われてみればこの前担任の先生が『今度転校生がきますよぉ〜』といってたような気もする。

 『そっか、転校生』

 『以外に驚かないんですね』


 振られてた女とこんなにコニュニケーションをとるのは一般的にどうなのかとも思ったがお互い無言のほうが気まずいだろう。振った男の方もわざわざ探しに来ないのも彼女にたいしての一種の優しさだろう。


 屋上にきたのも気晴らしか。


 『私、屋上って好きなんですよね』


 急に人が変わったように語り始める。


 『奇遇だな、俺もだ』


 『屋上ってなんだか誰にも見られていないようで全てに囲まれて入る感じがするっていうかですね』


 『なんだそれ』


 でもわかるような気はする。


 『だから私は屋上がすきなんです』


 『意味不明だな』


 でもそんな語っている彼女はとても美しく、そして儚く見えた。

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