【完結】ビビりだと馬鹿にするなら、勝手にしてください。どうぞスリルをとことん味わってください…最後まで。

西東友一

第1話

 ハブかれたくない。


 だから、遊園地に来た。

 それだけが理由だと言えば違う。もちろん僕だって遊園地にはワクワクする。

 パレードや、ゴーカート。ゆっくり動く乗り物や3Dのシアターで異世界ファンタジーのような世界を見るのはワクワクする。


 ―――けれど


「じゃあ、次はジェットコースターに乗ろうぜ」


 今回の企画者。山田(仮名)くんは僕の苦手なことになんて全く興味がない。


「いいねっ!!」


 天真爛漫な橘(仮名)さんもノリノリで山田くんにくっつく。


「えーこわいーっ」


 塩入(仮名)さんが橘さんの反対側で山田くんにくっつく。

 みんなみんな山田くんにくっついている。


 そう、僕は数合わせ。

 大学に入って初めてのゴールデンウィーク。

 イケイケの山田くんは専門学科の基礎クラスでかわいい橘さんと塩入さんを同時に口説いていた。橘さんも塩入さんもまんざらではなかった様子だけれど、1ヶ月で山田くんだけに固執もしたくなかったようだ。なんとなく、はぐらかしていて、遊びに行きながら山田くんを見定めているようだった。


 大学は遊びに来る場所じゃない・・・多分。

 このクラスで1,2を争う二人ともを手中に収めようとしているのは快く男子はあまりいなかった。最初はおこぼれにあずかろうとする奴もいたんだけれど、山田くんはそれを踏み台にして二人から笑いを取り、辱めを与えた。


 それを見て、男子は山田くんとほぼ話をしない。

 山田くんの対応は浅はかだったのかもしれない。男友達がいないのもあっただろうし、なかなか自分に絞らない橘さんも塩入さんも愛想が尽きてきたらしい。さすがに山田くんと自分ともう一人の女が歩くと言うのは癪だったようで、今回僕が数合わせで呼ばれたはずだが・・・


「大丈夫だって、何かあれば僕が守るから」


「「きゃーーーっ」」


 どうやら、女の子二人のプライドも他の学生の前で限定だったらしい。

 同級生がいなければ、この二人はこんなにも自分のかわいさを存分に発揮するようだ。目をキラキラ輝かせて山田くんを見つめている。

 つまり、二人は大学の中では「グループで遊びに行く」ということにして体裁を整えただけで、結局のところ二人とも山田くんにご執心だということだ。


 この時はまだ知らなかったけれど、山田くんは大企業の御曹司でものすごい大金持ちらしい。

 つまり、この二人は就活よりも婚活を頑張っていたわけだ。ベタベタ山田くんにくっつく二人。

 ただ、その努力が黒い魔の手に奪われることになるとは、全く思っていなかった。

 くっついているのは・・・すでに二人だけではなかったのかもしれない・・・。



 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る