【ヒーロー追放】防衛隊から追放された俺、「ざまぁ」そっちのけで世界を守っていたら、後釜の防衛隊員に復讐を誓われていた

@yayuS

プロローグ

 深い森の中。


 岩壁の中央に大きな洞窟があった。高さは3m、横幅は2m程の広さだ。外からは中の様子が見えないほどに暗く闇を孕んでいた。


 そんな洞窟の入口を多数の人間が扇状に銃を構えて囲む。



「ここが新たに発見された【扉ダンジョン】か……。全く、次から次へと出現しやがるな……」



 扇の中央。


 銃を所持する部隊のリーダーである男が呟いた。


 男の疲労が滲んだ声に反応するようにして、洞窟の奥から一匹の巨大な【魔物モンスター】が現れた。



「こいつは確か――【大鬼オーガ】。こないだ中国が多数の犠牲を払って、なんとか撃退した種族じゃないか!」



 洞窟の正面に立つと入り口が隠れる程の巨躯に、緑の肌と頭から生える二角が特徴的な【魔物モンスター】。


 隊員数と武装の豊潤差で全世界トップを誇る中国でさえ、撃退が手一杯な強さを持っていた。



 そんな強力な相手に対して、この場にいる戦力は9人。


 普通であれば撤退を指揮するのが、隊を率いるリーダーの役目なのだろうが――。



「……。でも、逆に言えばこれはチャンスだ。お前ら……戦う準備は出来ているよな?」



 引くことは一切考えてはいなかった。


 リーダーの声に反応するように7人は一斉に引き金を引く。


 止むことなく放たれる弾丸。


 だが、嵐のような弾幕を前に【大鬼オーガ】は足を前に踏み出した。



「こいつ……。こうなったら、【特殊装甲】を使う。岩間、浅田、瀬名は前に出ろ!!」



 3人の名前を呼んで戦うように指示をする。


 名前を呼ばれた男たちは、右手に付けられた手甲を見せつけるようにして腕を捲った。


 しかし、リーダーは3人名前を呼んだのに対して、二人しかいないことに直ぐに気が付いた。



「おい、瀬名! 瀬名はどうした!!」



 リーダーの声に応えたのは前に出た二人だった。



「さっきまでいたんすけど、こいつ見るなり腹痛いって言って、逃げ出しましたよ。ほんと、『セナカ』ってあだ名が良く似合うぜ。敵に背ばっかり見せてよ」



「全く。ま、あいつが居なくても、【小鬼ゴブリンの腕力わんりょく】で、こいつをぶっ飛ばしてやりますよ!!」



 二人はそう言って近づく【大鬼オーガ】に飛び掛かった。


 手甲を付けた右手で拳を振るうが――その手は殴りかかった顔に届くことなく、受け止められていた。


 弱いとばかりに醜い鬼が笑う。



「なっ……、こいつ……、【小鬼ゴブリンの腕力わんりょく】でも全然勝てねぇ」



 殴りかかった腕を掴み手甲ごと力で握りつぶした。


 骨が砕け肉を突き破り、四方八方から血が吹き出す。無残になった岩間の姿に、浅田は背を見せて逃げ出そうとするが、その頭上から棍棒を振り下ろした。



「うわああああ!!」



 迫りくる死を前に叫び声を上げる岩間。死の恐怖に表情は歪み、声が震える。


 だが――その声が命と共に消えることは無かった。



「へ?」



 目を開くとそこには――白い鎧を纏った男が立っていた。


 鎧の姿を見るなり命の危機に晒されていた男は安堵の息を吐いた。



「来てくれたのか……。信じてたぜ? 【三本角の鎧ヒーロー】」



「……世界、守らせて貰います」



 【三本角の鎧ヒーロー】は小さく呟くと、【大鬼オーガ】に向かって飛び掛かる。


 先ほどの岩間がしたように正面からの無謀な特攻を、【大鬼オーガ】もまた同じように受け止めようとするが――



「ガッ、ガガァ」



 受け止めようと差し出した手ごと吹き飛ばした。


 崖にぶつかり動きを止めた【大鬼オーガ】は動くことは無かった。

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