第31話 本選決勝戦 新しい超全力シリーズ発動!?


 超全力シリーズとは途中で何度でも形を変える事も出来る。


 蓮見は動じない。

 なぜならこれで勝負を決めると考えているから。

 綾香が最後まで諦めずにこちらに向かって飛んでこようが、爆炎が綾香に襲い護ってくれると信じているから。


 地上に蓮見の発動した『爆災無限ループ式爆破旋風』が地上に到達。

 すると、聖水瓶が炎によって加熱されるも脆くなった瓶の二つに紅蓮の矢が刺さり貫通。結果として爆発が起こる。


 ――ドガ―ン!!!


 バトルロワイアル始まって以来最高の爆発音と熱光がまずプレイヤーを襲い、次に聖水瓶が多すぎたことで次々と引火し灼熱と化した炎が竜巻の風の力をうけ荒々しく炎の海を作っては闘技場全体を包むようにして特殊障壁の壁をよじ登っていく。まるで竜の如き進行を続ける業火は蓮見のいる場所まで来るのに十秒とかからない。


 アイテムで作られた簡易障壁に到達した炎は蓮見のスキル竜巻の影響を受け今度は地上へと戻っていくもすぐに戻ってくる。

 これにて蓮見の超全力シリーズが完成。


 当然蓮見を含め全員が巻き込まれたソレは四人が戦っている闘技場の酸素を全て使いきる勢いで燃えている。


 蓮見の発動したはBREVEと呼ばれるもの。

 一時期蓮見が開発していたが特殊限定イベント『不夜城に眠る将軍』に間に合わなかったアレ(詳しくは本編356話あたり)である。

 会場全体を熱し続けた蓮見は爆発の連続により加熱されている聖水瓶はその容器内の液体を沸点より十分に高い温度まで加熱し圧力も高くした。

 この状態で容器の役割を果たしている聖水瓶が破裂すると容器内部の圧力は瞬間的に大気圧まで低下する。この時、容器内の平衡状態が破られ、液体は突沸し気体になることで爆発現象を起こすのだ。まさにエリカの悪知恵はまたしても愛する人物に力を与え新たな歴史の一ページを刻むこととなった。


 蓮見の狙いは一撃必殺でありそうじゃない。

 要はダメージを与え敵を倒すのではなく酸素を無くし強制的に勝つという普通のプレイヤーとは違う勝利方法を最初から目論んでいた。

 美紀と戦っても勝てないことは修行の時にわかっている。

 だったら綾香とソフィに勝つことも殆ど無理だろう。

 だが相手が誰であろうがこれならと蓮見は思った。

 酸素さえなければどんなに強い女の子でも倒せるのではないかと。

 悪魔の考えを思いつき実行。

 された側は息が出来ないでパニック状態に陥る。

 五感潰しが効かないなら呼吸器系呼吸器官潰し。

 常人では真似しようとも思いつきすらしないことをこの男は平然と思いついては実行する。ただし最大の欠点は蓮見自身も受けることになることだ。闘技場全体の酸素を奪うのだ。当然そこにいる美紀、綾香、ソフィだけでなく蓮見も酸素が極端に薄くなったフィールドに取り残されるということ。後は純粋な我慢比べとなる。


「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」


 息が苦しく蓮見は毒矢の制御を失い地上へと落ちる。

 運よくダメージを受けることはなかったが、酸素が足りなくなり時間にして数十秒で消えた業火は蓮見の呼吸器官にもダメージを与えていた。


「さ、さんそぉ~」


 口で息をして立ち上がると、同じくしてゲホッゲホッしながら三人が立ち上がろうとしていた。どうやら蓮見と同じく呼吸困難になり地上に落下したのだろう。もしかしたら何人かは蓮見を止めようと近づき業火の嵐となった竜巻に巻き込まれ、地上に落下したのかもしれない。


「「「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、く、くるしい……」」」


「えっ……怒ってる?」


 息を荒くしてこちらを涙目で見てくる女の子三人に蓮見は思う。

 あれ? 戦意喪失するどころか怒ってない? と。


「あ、あんたね……」


 この借りは返すと美紀が目で訴えてくる。


「流石は紅。これは一本取られたよ……。まじで死にそう……リアルにね」


 褒めつつもこのまま負けるつもりはないと綾香。


「呼吸困難……初めてだ。久しぶりに危機感を全身で感じたぞ。いや……はぁ、はぁ、はぁ~、今も感じているが正解か」


 負けず嫌いなのか双剣を握りしめてまだ戦えるとソフィ。


 三人の女の子はこれ以上蓮見を好き勝手させたら本気で負けると全身で感じていた。このままでは世間から神災と呼ばれる物が第二波、第三波、第……と、間髪いれず続けてくるかもしれない。

 フィールドの酸素は既に僅かと限られている。

 故に戦える時間は長くはない。

 意識が朦朧とし始めたこの状況で蓮見が作った簡易障壁を破壊するのはそれはそれで今にして思えば骨が折れることから先に破壊しておけば良かったと後悔する三人。


「「「悪いけどまずはその首をまずは貰う(わ)」」」


 三人の意見と言葉が一致した。

 息が苦しくても意識がぼっーとし始めた蓮見はマズいと思う。

 我慢比べなら男と女で正直勝てると思ったが、蓮見以上にどうやら三人は負けず嫌いらしい。


「……さて、どうするかな俺様」


 ついに万策尽きた蓮見は――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る