第51話 夏祭り そのよん

俺と美玖は花火が終わって皆と合流する為にゆっくりと歩いていた。


「花火終わっちゃったね……。」


「終わっちゃったな……。なんかあっという間に終わった感じがするよな。」


「ふふっ、楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうよね〜。」


中学までは時々友達と遊びに行ったりしたけど、基本的には2人で過ごしていた。


こうやって美玖と共通の友人が出来て皆で遊びに出掛ける夏休みはいつもよりも騒がしく楽しい時間だった。


美玖と恋人になってから過ごす初めての夏休みは幸せで新たな友人達との時間も過ごせて嬉しかった。


「まだ皆来てないみたいだな。」


「私達が一番目だね。杏奈と可奈も花火楽しめたかな?」


「金澤は輝弘の告白を受けてからだから恥ずかしがりながら楽しんだんじゃないか?濱谷は……まぁ、うん……きっと楽しめたんじゃないか?」


「杏奈が顔真っ赤にしながら花火を見てる様子が浮かぶよ。可奈には悪いことしちゃった気もするけど……可奈も古谷君の事を本気で嫌ってるわけじゃないから、案外楽しんでたかも?」


美玖は金澤が顔を真っ赤にしながら花火を見上げる様子が浮かんだらしく笑いながら言った。


「濱谷の奴は文句を言いながらも一緒に遊んでるもんなぁ……敦と相性が良かったり?」


「あはは!そんなふうに言ったら可奈に怒られるよ〜?『アイツと相性がいいわけあるかー!!』って」


「あー、たしかに言いそうだな。目に浮かぶよ……。」


美玖が濱谷の口調を真似ながら言ったのを見て俺の尻に蹴りを入れながらキレるであろう光景が目に浮かぶのだった。


「輝弘と淳史達遅いなぁ……。」


俺は一旦別れた友人達が戻って来てないか周りを見渡してキョロキョロしている。なぜなら輝弘をからかってやりたくて仕方が無かった。


「……猛〜?いくら2人が付き合う事が分かりきってるからって揶揄うのはダメだよー?」


「なんで分かった!?俺顔に出しちゃってたか!?」


「言葉にはしてなかったけど、猛がやりそうな事くらい分かるもん……。」


……どうやら美玖には俺の考えてる事がわかっていたらしくジト目を向けられながら注意されてしまった。



「……でもさ、あの野球一筋男だった輝弘が女子に告白なんて考えたらさ嬉しくて揶揄って祝福したいじゃんか!?」


「……いや、そんな気持ちにならないよ。普通に祝福してあげればいいよね?」


「……だってそれじゃあつまらな」


「猛?普通に祝福してあげようね?」


「……はい。」


俺がつまらないと言い終わるより早く美玖が笑顔で言ってきたので俺は素直に従った。

……顔は笑ってるんだけど目が笑ってないのだ。こういう時の美玖には逆らってはいけないというのが俺の中のルールだからだ。


……中学生の頃一回ルールを破って美玖をさらに怒らせてしまった事があるが、怖かったとだけ記しておこう。


俺が素直に従ったからいつもの美玖に戻って他のメンバーが来るのを2人で待つのだった。

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