どんな冴えない男でも、この俺の成功体験メソッドを読めば億万長者になり、女にモテ、最高の地位と名誉を得られるから、試しに読んでみろよ。

第1話 無職童貞だった俺が綿密なマーケティング調査と経済理論から導き出した、最高の小説を投稿するまで

俺の名前は蒸奥銅帝（むしおくどうてい）。

何の因果か名前通り、無職童貞だ。

今年で29歳になる。

父からは働けと言われ、母からは家事くらい手伝えと言われ、妹は既に結婚して子供までいる。

ネットゲームやアニメ、ニコニコ動画や漫画等を嗜（たしな）む俺だが、さすがに来年で30歳か・・・。

どうやら俺もそろそろ本気を出す時が来たようだな・・・！

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俺はとりあえず日本の誇る大企業、ト〇タ自動車の正社員の募集に応募した。

まあ、初めは平社員だろうが、1、2年後は部長、3、4年後には社長になっていることだろう。

面接では以下のようなやり取りが行われた。

「今までお仕事のご経験は？」

「ありません」

「それは何故です？」

「自分磨きのためです」

「資格欄には何も記入が無いようですが？」

「ゲームやアニメ、動画鑑賞を通して自分を磨いてきました」

「そ、そうですか・・・わかりました採否は後日連絡いたします」

面接官は俺の完璧な受け答えにぐうの音も出無い様だ。

フッ。採否の連絡など必要ない。

どうせ募集枠の首席で採用だろう。

俺は堂々と面接室を後にした。

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後日メールが届いた。

蒸奥銅帝様

この度は、弊社の採用選考をお受け頂き、まことにありがとうございました。先日の面接内容や応募書類を精査した結果、弊社では蒸奥様が活躍できる場所をご用意することができないという結論に至りました。

せっかくご足労して頂いたのにも関わらず、申し訳ございません。まことに心苦しいのですが、なにとぞご了承いただけるようにお願い致します。

蒸奥様の、より一層のご活躍をお祈り申し上げます。

・・・日本の大企業でもメールを送る相手を間違えることあるんだな。

俺はト〇タの採用担当に電話して確認した。

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何かの間違いだとは思うが、結果は不採用だった。

チッ。見る目の無い奴らめ。

しかし、見方を変えれば・・・。

やはり俺は一企業に収まる様な器では無いとも考えられる。

よし。

他の方法を探すか・・・。

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俺はネットで金を稼ぐ方法を検索した。

FXや株？

元手がねーよ！

・・・ん？何々？

ふむ、youtubeか・・・。

動画を撮って投稿すれば再生数が金になるらしい。

なら・・・。

俺は家で飼っている犬の動画をスマホで取ってyoutubeに投稿してみた。

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次の日。

・・・再生数20？

何かの間違いだろう？

俺の撮影センスなら再生数一億は叩き出す計算だった。

コメントには撮影がブレていてよく見えないとか書いてある。

フン、見る目の無い奴らめ。

まあいい。

他に金を稼ぐ方法は？

・・・ライトノベル？

ああ、最近よく聞くな。

”なろう系小説”だっけ？

アニメ化された作品も多い奴だ。

確か異世界物が多いよな。

ちょうど良い。

アニメは俺の趣味だ。

なら、その元となるシナリオを書くことなど俺にかかれば朝飯前だ。

最近は長いタイトルの作品が流行りらしいな。

なら、題名はうんと長くしてやろう。

「とてつもない才能と実力を秘めた俺が、異世界に行ったらやっぱりとてつもない才能と実力を秘めていて、中ボスどころか魔王なんか瞬殺で、新しい国王になり、とてつもなく素晴らしい政治をして、全国民の敬愛を集めた件について」

よし、これで題名は完璧だ。

後は本文を書くか。

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俺は一か月位かけて全50ページほどのシナリオを書いた。

まあ、内容はおおむね題名通りの話だ。

タイトルを作っただけで既にプロットまでもが完ぺきだったとは・・・。

俺は俺自身の才能が恐ろしくなった。

よし、後は投稿ボタンを押してっと・・・。

ふう。流石に疲れたな。

今日はもう寝るか。