異世界に転移したら親友が主人公的立ち位置の勇者でした

ヨートロー

第一章

転移編

第1話

『期待値』という言葉を聞いたことがあるだろうか。

 数学で使う値だそうだが、簡単に言うと


 を割合として出すことが出来る値だ。


 △▼△


「部活、決まった?」

 

 放課後、高校入学早々に席替えがあり隣になった光弥こうやが適当に話題を振るかのように話しかけてきた。


「………中学と同じでいっかなぁ、まだやってたいし」

「えー? またテニスぅ? 俺飽きちゃった」

 

 配られたばかりの教科書を荷物に詰めていた俺の手を取ると光弥は強引に教室から連れ出した。


「なにすんだよ!」

「教科書なんぞ机にしまっとけ! 部活見学しようぜっ」

「だからテニスでいいんだって!」

 

 無理やり引っ張られているせいでこけそうになりながら俺は光弥につられるように叫んだ。


「そこも見る! けど他もみよう! せっかく高校生になったんだ。全力で楽しまにゃ!」

 

 光弥はいつもこうだ。思った瞬間に行動に移すし、なぜか必ず俺を連れていく。生まれたときからの付き合いなのに、いまだに行動が読めなくていつもこけそうになる。 


 「あかりもそうは思わないか⁈」

 

 手を離した後も俺がついてきているか確認するように度々振り返る幼馴染を追いかけながら、それでも俺がその手を振りほどかない理由を自問するが答えは出ない。


「………どうでもいいわ!」

「なんだとぅ⁈」


 これから起こることを俺は知らない。多分、光弥も。

 純粋に楽しみにしていた、高校生としての生活を。

 この春、俺、陽ノ本 あかりと幼馴染の剣崎 光弥こうやは 


 高校生になった。


 ちなみに、入学式当日ということもあり部活はどこもやっていなかった。


 △▼△


 さて、ここで問題です。


 明日の俺の『期待値』は何パーセント?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る