技術の発展により生き方を選べるようになった〝はず〟の未来

 人工子宮が普及し、多くの女性が生後すぐに子宮を切除するのが当たり前になった世界の、とある高校の少女ふたりの物語。

 SFであり青春ものの短編です。思春期年代に特有の感覚、自分の認識の殻を打ち破らんともがく、その息苦しさや焦燥感のようなものがメリメリ胸を締め付けてくる作品。
 それはどうしたって身近な大人への反発という形で現れるもので、きっとはたから見たなら「幼い子供の身勝手」とも受け取ってしまえるであろうそれを、きっちり〝わかる〟形で読ませてくれるところが素敵でした。SF部分に絡む常識感覚を軸に据えることで、手癖で良し悪し(共感・非共感)を判断できなくしてくれるこの手際!

 主人公であるふたりの少女の、抱えた悩みや苦しみのようなものが好きです。
 現実の世界の我々には(少なくともこの形では)持ち得ない、この作品世界であればこその苦悩。
 生殖絡みの大変なあれこれから解放され、でも個々人の(当人でなく保護者の、ではあるものの)自由な判断によりあえて残すこともできる——つまりは「単純に生きやすくなったし、ただ選択肢が増えただけ〝のはず〟」の世界に、でもはっきり生じている深い苦しみ。
 皮肉にも、なんて言い方ではニュアンスが違うのですけれど、しかしどこまで行っても人の所作であることから逃げない(逃れられない)、この物語のあり方そのものが本当に、重く苦しく気持ちいいです。

 個人的にはほのかなディストピア要素も好きです。「親」の役回りを担う存在が、結局最後までどこにも見えなかったところ。ものすごくハッピーな終わり方をしているように見えて、だからこそ背筋が凍るのが楽しい作品でした。