並走

「大丈夫、疲れてない?」


彼女の脇で並走している私は、誰かの走りを気遣う余裕はあった。


「大丈夫」


彼女は息を吐き、前を向きながら応える。

声には力強さがある。


彼女は大丈夫だろう。


コースが別れ道に差し掛かり、ワタルが私に何かを言ってるのに気づいた。


「どうしたの?」


私は駆け寄って、彼に問う。


コースの奥を指差し、半袖短パンの服装に着替えた彼は早口に一言伝えてくる。


「この後、走るよ、俺」


「え?この後?」


「うん」


「この後か…」


私は先を行く彼女の後ろ姿を目で追った。腕をしっかり振り、リズムにも乱れは無さそうだ。


「分かった」


決意して、一言ワタルにそう伝えた。

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