第18話 後悔と悔しさの先に

 私は全ての治療を終えると仮設の診療所からの外に出た。

そこで軽く伸びをする。


「お疲れ様でした。飲みますか?」


 ライムントがカップに入った水を手渡してくれた。


「頂きますね。ライムントさんも手伝ってくれてありがとうございました」

「いえ、それにしてもすごいですね。サクラさんの技術は」

「患者さんの声が何よりも医師を強くしてくれますからね」


 医師というのは救えなかった悔しさや後悔をバネに戦っているところがあると私は思う。


「では、王都に帰りましょうか」

「そうですね。行きましょう」


 今から王都に戻っても日が沈むまでには到着するだろう。

私たちは村から出ようとした。


「サクラさん」


 その時、私は後ろから村長さんの声によって呼び止められた。


「本当にありがとうございました。村の者も皆んな貴方に感謝しております」


 村長の後ろには笑顔になった村人たちがいた。


「いいえ。元気になってよかったです。それでは、私たちは王都に戻りますので」

「道中、お気をつけて」


 私たちは馬車が停車しているところまでゆっくりと歩いた。


「足元、気をつけてください」

「ありがとうございます」


 馬車の場所まで到着すると、ライムントが手を貸して馬車に乗せてくれる。

貴族の間ではこれが普通なのだが、イケメンにされると、ときめいてしまう。


「お疲れでしょう。少し休んでください」

「分かりました。お言葉に甘えます」


 私は馬車の椅子に座って目を閉じた。

回復魔法で魔力は使っているが、まだ魔力は半分ほど残っていた。

王都に着く頃には8割くらいまでには回復するだろう。

 

 しかし、集中力は使った。

医療行為をするのはずっと集中しているところがある。


 その集中状態が切れると一気に疲れが押し寄せてくるのだ。

気づくと、私は意識を手放していた。


「おはようございます」


 私が再び目を開けると、ライムントが笑顔で言った。

外を見ると空が夕焼けで橙色に染まっていた。


「おはようございます。私、寝てしまったみたいで……」


 寝顔を見られていたと思うと、どここなく恥ずかしい感じがする。

私、変な顔していなかったかな?


「お疲れなんでしょう。寝顔もお美しかったので心配入りませんよ」

「あ、ありがとうござます」

 

 この人は私の心を読んでいるのだろうか。

美しいとそんなにストレートに言われたらシンプルに照れてします。


「もう少しで王都に着きますから、お部屋でゆっくりしてください」


 どうやら、私はそんなに長い時間意識を手放していたようだ。

一度スイッチが切れると簡単には戻れないのが私の悪い癖だとは思う。


「ありがとうございます。そんなに長いこと寝てしまってお恥ずかしいです」

「お医者さんというのは神経を使うと言いますし、仕方ないですよ」


 なんて理解のある方なのだろう。

医師の過酷な労働をわかってくれる人はあんまり居ないのだ。


「着きましたよ」


 王都に入ると、馬車は王宮の庭で停車した。

ライムントの手を借りて馬車から降りる。


「お疲れ様でした」

「はい。ライムントさんもお疲れ様です。見た感じ怪我はしてませんけど疲れは溜まっているみたいなので、今日は早めに寝ることを推奨します」

「お医者さんに言われては仕方ないですね。早めに寝るようにしますね」


 それから、ライムントさんは私を部屋まで送ってくれた。

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