第10話 心の穴

三年の月日が流れた。


最後の試合以来、とにかく平凡な毎日だった。

どこかこんなやすらぎが欲しかったのかもしれない。


週末は気の知れた友達と居酒屋に行ったりもした。

キンキンに冷えた生ビールを流し込むと仕事の事なんて忘れられた。


「またねー。」


友達に手を振り別れるときまって1人空を見上げた。


月が微笑み、ゆっくりと雲に隠れていく。


「僕ってなんてちっぽけなんだろう」


茶道やワークアウトは続けていた。

友達には「変わってるね」と言われる。

「みんなの方が変わってるよ」と言い返し笑った。


"家庭を持ち、幸せいっぱいで我が子の話をする同年代の仲間達。"


"好きな事の為、休日の為、働く僕。"


「このままでいいのかな、」


心にポッカリと穴が空いていた。


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