第5話 黄昏時のその先へ

僕は目が覚める前にみんなに別れを告げるとゆっくりと目を閉じる。みんなも各々が僕のあいさつに返事を返してくれる。


そのまま、辺りは暗闇へと移り変わる。あたりに街灯や光がなく月明りのみが照らしている。ここで、僕はふとおかしなことに気づいてしまう。


「ねぇ、暗くなったら勝手に目が覚めるんだよね?もう暗くなっているような気がするんだけど?」


僕の問いかけに龍矢は困惑しているようだった。由佳と真矢の二人も僕の言っている不自然さにようやく気付いたのか心配そうに龍矢に目を向ける。


「おかしいな、いつもは勝手に目が覚めるんだけど、どうなっているんだ?」


「ちょっと!あんた言っていたことと全然違うじゃない。」


真矢が龍矢の適当な態度に再び怒りをあらわにし始める。しかし、いつも彼女のことを見てきた僕にはわかる。今の彼女は恐怖感じているのだろう、少しだけ彼女の背中が小さくなっている気がする。


龍矢に食ってかかっているのは少しでも恐怖心を紛らわしたいためだろう。少しだけ肩も震えている気がする。


「仕方ないじゃんか、俺もこんな事初めてなんだよ。」


「ほかに帰る方法はないの?」


由佳も心配になってきたのか龍矢に尋ねるが返ってきた答えは真矢の時と同様であった。僕は先ほどから言い知れぬ不安感に襲われているがその正体が一体何なのかは僕自身にも分からない。


僕に分かるのはここにいてはマズいということだけだった。そのうち、カクレユメを教えてくれた龍矢自身も心配になってきたのだろう。先ほどまでの他人事のように二人の問いに答えていた龍矢とは違って徐々に口数が減っていき元気がなくなっている。


月明りしかあたりを照らすものはなく、誰もいない田舎道。まだ子供の僕たちが不安で心細くなるのに時間はかからなかった。


恐怖と心細さから始めに泣き始めてしまったのは由佳だった。


「ねぇ、龍矢君。何かの冗談なんでしょ、本当は帰る方法を知っているんだよね?もうからかうのは止めて、お家に帰してよ。もういいよ。ヒクッ、ヒクッ。」


「お、おい、泣くなよ。俺だって帰れるもんなら帰りたいよ。うっ、ぐすっ。」


由佳に影響されてか龍矢まで次第に泣き始めてしまう。僕も次第に二人に影響されて泣き出しそうになるがどこからか声が聞こえたような気がした。探索した時には聞かなかった誰かの声に自然と泣き出しそうな涙は収まった。

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