やっぱりわたしは捨てられる

 それからしばらくラブラブな毎日にわたしはお姫様気分。

名前負けしてる美しい姫と書く『美姫』だって受け入れられた。

拓馬さんは、アイドルにいてもおかしくない、警察官のポスターになりそうなタレントみたい。


整ったお顔で毎日わたしを愛してくれた。

「美姫!抱っこ〜おいでっ」

「仕方なく付き合ったんでしょ」

「そんなわけ無いだろ。可愛いからだよ。大好きだよ 美姫 ずっと一緒だよ」


オタク達とジャージで戯れながらも毎日は楽しかった。

「美姫ちゃん、ちょっと!Aの12から15早くしてくださいよ〜次僕なんすよ」

「ああすまんすまんっ。秒でしますっ。」


クリスマス!日曜日!拓馬さんとは昨日デートしたけど。まだまだ今日はわたしがプレゼントなのだ。


さぶいっさぶいっ わたしやっぱりアホかな

コートの下にサンタコスプレミニスカで、ジングルベール♪が鳴り響く街を歩き、拓馬さんのマンションへ。


ん?拓馬さん.....?

拓馬さんの横には巻髪クネクネ女

近づかないと見えない視力がうっとーしぃ

わたしは近寄る マンションのロビーに。

ポストの辺りで―――――猛烈なキス......してる


仁王立ちで、露出狂のごとくコートからサンタコスプレを露わにしたわたしを見てその巻髪女が


「だれ?なに?」


「知らない。何あれ...」

拓馬さんが言った.......言った


わたしにはまるで


『あれ?なに?』


『捨て忘れたわ 汚ね』

って聞こえた......。



 わたしは走ったひたすら走った 来た道を逆方向に

浮かれた音をだすクリスマスの煌めく夜の街に放たれた捨て犬みたいに

涙で悔し涙でくしゃくしゃになりながら、楽し気な行き交う人々を避けながら


もし時間がもどるならあの晩、拓馬さんのベッドになんか入らない!

いやモテないからまんまと引っかかっただけ、ただの遊びだったのか

遊びと本気の区別なんて私にはわからない......いつも本気にするから

好きな人になんて振り向かれたことなんてない

どーやったら可愛くみえるかなんて知らない

すり寄って気持ち悪がられて落ち込む

だから、いつもおふざけトークに徹してきた

そんなわたしを初めて好きって......

わざわざ付き合ってからあんな捨て方ひどいっ

ブサイクかもしれないけど、愛嬌は捨てなかった

心はわたし可愛かったでしょ?

これじゃとうとう心まで....

わたしは打たれ弱い

だから、打たれないように生きてきたのに......。


心の叫びを叫びながら家につく。

やっぱり悲しい。ショックと屈辱的なあのひと言とあの顔が頭から消えない。

サンタさんいるの?神様いるの?


一生に一度のお願いです

わたしをシンデレラみたいな美女にして―――――――ッ


+++


わ!?夢か。わたしが願ったからって顔変わるわけねぇわって~


「うっ?!!なッ!!?ぎゃ――――――――――ッッ!??!誰!?誰........これ」


鏡に映るのは、凛とした美女だった。鼻もすっと美しい。目も二重で切れ長の色気がある眼差し、唇は控えめながら口角があがり、シャープな小顔。


夢?いや妄想でついに、おかしくなった?!きっとそうだ.......ついに病んだんだ。


わたしは鏡に写った美女の衝撃で昨日の出来事が半分は頭からすっ飛んだっ。

あっいけね。とりあえず出社しよ。


いつものスーツを、あれ?わたしの自慢のおっぱいがちょっとコンパクトに?!なんで?えっなんで?一夜で女性ホルモン減少?

どーするよ?ブラがぶかぶか。仕方なくスポーツ用のブラにした。

SPORTS STYLEってこのピンクの字透けるぞ。ダサッ。

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