ありし夢の空

きゃっくん【小奏潤】

第1章 転校

ep1 ことのはじまり

snsのTogetherやWIREなどの普及で、見ず知らずの人達ともどこに住んでいても、いとも簡単に繋がり友だちのように繋がることが出来る。


オレのような高校でぼっち飯を食らうのが、当たり前のような男子高校生でも、スマートフォンを手にした時から、Togetherをやって、「おはよう」や「寝る」とか日常の何気ないつぶやきをTogetherに書き込み、気になったつぶやきや好きなコンテンツの情報をチェックしていると、いつの間にか、フォローしてくれる人がどんどん増えてくる。その分、オレもフォローバックをしたりする。そして、目に見えないけど、本名も性別も年齢も何も分からないけど、いつの間にか、親友や友だち、妹や姉、弟や兄のようなそんな関係のようなフォロワーさんもできてくる。


オレは、「空さん」という名前で、Togetherをやっている。なぜ、「空さん」なのかというと、本名が、〈三条 蒼空〉だから、名前のソラというのを簡単にしたのだ。むしろ、オレはこっちの「空」という文字の方が気に入っている。安直過ぎる気もするが、特に誰もオレの個人情報まで気にしないだろう。


そんな夏休みのある日。

オレはTogetherに「これから宿題かー、ダルっ」と呟いた。そこに1人のフォロワーさんの「ヒミコ」からリプライが来た。「わかるー、ウチのとこも夏休みの宿題いっぱいでたのー!!」この「ヒミコ」はここのところ、仲良くしてくれてるありがたいフォロワーだ。歴史の〈卑弥呼〉とはなんの関係もないのだろうか? それともその卑弥呼のファンなのか? など、この「ヒミコ」に関する疑問を抱きつつ、卑弥呼ついでに、日本史の宿題を手につけようとした。

そこに、母親から呼ばれた。ちなみに父親はこの時点では、大阪にいる。


「蒼空、急にゴメンねぇ、お父さんが単身赴任してるのは知ってるでしょ?」

「まぁ、それは知ってるよ。ちょうど昨日の夕方、父さんとWIREで通話したしな」

「あらっ、そうなの? じゃ。話が早いわね。この夏に、お父さんが単身赴任先にずっといることになるのよ。まぁ、蒼空には悪いけど高校転校になるわねぇ」

「ん?」


いや、待て。昨日の父さんとのWIREの通話でそんな話は出なかったぞ。むしろ、仕事が最近うまいこといって……とかくらいしか聞いていないぞ。


「え、お父さん、何も話してなかった?」

「何も言ってなかった」

「まぁ、そういうことだから、心の用意だけはしておいてね」


心の用意って、何をすればいいんだ? そう思いつつ、日本史の宿題を見た。高校を転校するということは、この宿題も不要なのでは?


「宿題はしなくていいか」

翌日、母親から「宿題は向こうで蒼空の学力測るのと、どこまで進んでたかの確認するためにしなさいよ」と言われた。



その数日後、オレは大阪に引っ越した。友だちは、そもそも現実リアルではいなかったから、そこまで寂しくは思わなかった。


大阪に着いた。大阪というと、天下の台所と言われるほど栄えている。もちろん、オレが住む市も……。と思った。しかし、現実は非なり。大阪市内には電車で快速で1駅だが鈍行の電車だと4駅もある。まぁ、オレは家の近くに娯楽施設があれば許そうと思っていた。あと、通う予定の高校もあればなおよし。街の散策に出ようとした。しかし、家具の搬入やら配置などを見届けるので、引越し初日は家から出られなかった。


大阪に来てしばらく経ち、今日は大阪の高校の編入初日だ。高校までは徒歩で10分くらいと近くて助かった。


「失礼しまーす。今日から、転校してきた三条です」


職員室にあいさつに顔を出した。「おっ、キミが三条か」と言われ、なんだかんだ説明を受けた。そして、担任の先生と共に3階の2年生の階へと進んだ。途中、オレが2階が2年生の階と思って止まろうとしてるのをみた担任の先生は、「あっ、2年生は3階たぞ」と教えてくれた。



「三条はここで待っててくれ」


担任から言われて、2年5組の前で待っていた。チャイムがなり、ホームルームの時間になったらしい。数分経ち、担任がオレを呼んだ。


「転校生だ、いぇい!!」


さっきまでのありきたりな先生の雰囲気はいずこへ。テンションがとても高い担任の先生がいた。


「三条 蒼空です。よろしくお願いします」

「まぁ、三条に聞きたいことは山々だと思うが、それは後にしてくれ。あとはー、そうだ、大事なの忘れてた。今年は文化祭を試験的に外部の誰でも入れるような大規模なのにしよう!とさっきの職員会議で可決されたところだ。おっと、三条はえーと、希咲キサキ船原フナバラの間な、ということでよろしく頼む」


担任の先生は教室を出た。おそらく、他のクラスに授業があるのだろう。


「三条くん。こっちこっち」


1人の女の子、いかにも活発そうな、オレとは对の存在っぽい子が、オレを呼んだ。


「あっ。うっす」


カバンを席に置き、今日からオレの新生活が始まる。




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