ある恋のあまりにも悲愴な行く末

 ある日突然ミュータント化した少年・和矢を幼なじみに持つ少女・舞の、ほろ苦く悲愴な青春の物語。

 恋と青春のお話です。突然のミュータント化という展開の、描写のグロテスクさとそのインパクトが好き。その後の彼の受容のされ方、まったくとは行かずともそこそこ普通に高校生しているところも含めて、ある種の不条理さのようなものを孕んだ世界観が素敵でした。
 この世界のあり方そのものの持っている味、あるいは意味。

 不条理な非日常要素を孕んだ上で、しかし描かれているのはあくまで真っ当な人間ドラマ、というところが本作最大の魅力。
 特に個人的に好きなのは、主人公の思いがほとんど描かれていない点です。
 描かれているのは彼女の目から見た幼なじみ・友人の人間関係、そこで起こった出来事などの事実のみで、彼女の思いはただ推し量る以外にない。その上でジャンルが恋愛であることも含めて、非常にたまらないものがありました。

 終盤の展開、特に最後の一文がもう最高に好きです。
 悲愴ながらもしかし確実に前を向いている、強い「その後」を信じさせてくれる幕引き。こういうのに弱いんです……ほんと良い……ずるい……。