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明日は、奇しくも弟の命日だった。


弟を殺した犯人が死に、いい報告が出来る、訳でもない。ただの義務程度にしかヒサシは感じてない。母親もあんな感じなので寺の方から誰一人として現れなかったら苦情が来る。面倒ながらもヒサシは1人で墓参りに向かった。


墓地に着くと、墓石の前で若い女性が1人たっていた。花を手向け、線香をあげている様子から間違いなくうちの墓だとヒサシはわかった。


「親父の隠し子かなんかか、アンタ」


背後から声をかけられ驚いた女性は小さな悲鳴をあげた。


振り向く女性はヒサシよりも年下のような印象を受けた。


目鼻立ちのくっきりした愛嬌を感じる顔で、凛とした気品のようなものも感じる。


「そんなんじゃありません」


「じゃあどちらさんだよ」


「石原サチ。タケルくんの同級生です」


「中学? 高校?」


「高校です」


「良くもまぁたった4ヶ月程度の付き合いで7回忌の墓参りに来てくれるな。あいつに惚れてたのか?」


「あなたは、お兄さんですか?」


「戸籍上のな。それ以上の感情は持ち合わせてない」




と、ヒサシと石原サチの出会いは極めてドライなものだった。ヒサシは彼女の存在を訝しがった。


弟の交友関係にも興味がなかったし、彼女が居たとしても知ろうとも思わなかった。が、あの短い高校生活の中で7年もの間弟を忘れることなく思い続けられる人間が、母親以外に居るとはヒサシには思えなかったからだ。



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