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ヒサシは日の出公園でワタルを待った。いつもこの時間にワタルは公園を通り仕事に向かう。


「よぉワタル」早朝ではあるが、熱帯夜が続く横浜では既に気温は30度を超えている。


ヒサシの服は汗で張り付いていた。


「え、ヒサシさんこんな朝早くからどうしたんすか?」


「リョウにお前の話聞いてよ、慰めてやろうと思ってな」とヒサシはコンビニで買ってきたタバコをワンカートン、ワタルに渡した。この代金も盗撮オヤジからくすねた金で買ったものだ。


「酔っ払いにいきなり殴られたんすよ」とワタルは憤りを感じながら細かく説明をした。


「現場の監督さん、キレるとヤバいんで遅刻だけは出来ないんすよ。だから気が済むまでオヤジを殴ってる暇がなくて」


「物足りねーってか?」ワタルの不完全燃焼がヒサシにも伝わってきた。もしそのオヤジが今ここに現れたらワタルはサンドバッグを殴りつけるように、そいつに襲い掛かるだろう。


「で、この辺で揉めてたのか」


「俺があっちに歩いてくじゃないすか?


そしたらそのオヤジが後ろから突然に」


パリッとしたスーツを着た、眼鏡をかけ髪を七三に分けた若い男の顔が突如としてヒサシの脳裏に蘇る。


「5.60くらいのむさ苦しいオッサンだったんですけど、俺らが汗水垂らして働いてんのに、朝っぱらから酒飲むようなクズなんすよ。どう思いますか、ぶっ殺してやりたくなりますよね」


「あ、あぁ。そうだな」ヒサシはまた若いサラリーマンのもの涼し気な顔を思い浮かべた。幾度となくスマホの画面を眺めこっちの方向へと迷いなく進むその顔が、脳裏から剥がれなかった。


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