俺と彼女=最高の恋人で相棒!

@iatti

第1話 プロローグ


 小鳥のさえずりが聞こえる朝の時間。そこに鳴り響くのは音の高い女の声。


「ちょっとジャック!早く起きなさい!」


 どうやら女はジャックという名の男を起こしているようだ。男は目を瞑ったまま返答する。


「ん~?今日は休みだろ~?」


「休みだからっていつまでも寝てて良いわけじゃないの。ほらさっさと起きる!それとも寝ないといけない理由でもあるわけ?」


「あるぞ」


「へぇ?どんなの?」




「成長期」


「もう成長する必要ないでしょ。十六歳で百七十八センチもあるんだから」


 男の苦し紛れの言い分に痺れを切らしたらしい女が男をベッドから叩き落とす。………………非常に痛い。

 さっきから三人称っぽく話していたが、痛みはどうやっても他人ではなく自分に来てしまう。



 ……やっぱり言い訳に成長期は無理があったかな、うん。


「分かった分かった。起きますよーだ」


 流石にこれ以上やられてはたまらないので大人しく起き上がる。


「全く。最初っからそうしてなさいよ」


「眠いものは眠いの」


 誰だってあるだろう。いくら寝ても寝足りない、もっと寝たいという時が。それがまさに今の俺なのだ。


「普段から夜更かししてるからでしょ。朝ごはん作っておいたから食べなさいよ。私は北の森に行ってくるから」


「はいよーって、あれ?今日は休みじゃないの?」


 あれ?まさか俺の勘違い?もしかして仕事だった……?いやいや、さっきは確かに休みだって言っていたはず。


「休みで合ってるわよ。気になることがあったから、私個人として行くだけ。夜には帰るわよ」


「そうか。まぁ休みならなんでもいいや。行ってらっしゃい」


「ええ、行ってくるわ」


 冒険者たるもの、気になることなんていくつもあるだろう。いちいち気にしていられないので深くは聞かず、俺よりも一つだけ年下の小柄な背中を見送った。




「朝ごはん食べたら二度寝しよっと」



・~・~・~・



「ふわぁぁああぁぁ──」


 良く寝たでござる。朝から数時間が経ち、今はお昼頃だ。

 さぁなにをしようか……。


「うーん、やることないしギルドの連中と話すか」


 そうと決まれば早速行動!パパっと着替えてすぐ移動だ。

 

 

 道中、俺は結構な人に声をかけられる。理由は俺がSランクの冒険者だからだろう。Sランクの冒険者といえば国内トップレベルの力を持つ実力者だ。皆俺の力が欲しいが故に声をかけてくる。


「おっ!今日も金髪決まってるねぇ!」


「最近あの子とはどうだ?順調か?お?」


「そんなことより肉はいらないか?今良い感じの入ってるぞ~?」


 なーんてことはなく。皆揃いも揃って俺をからかってくる。

 ──たまに何かを売ろうとする人もいるが。


 この感じに俺も慣れてしまい、適当にあしらいながら歩いているといつの間にかギルドへ着いている。



「ウィース」


 若者らしく若者っぽい言葉で挨拶するが、ギルドの中からの反応はない。それどころか静まりかえってしまった。



 あれ?俺何かやっちゃいました?


「てめぇ!俺達のアイドル、リリスちゃんを奪いやがってぇぇぇッ!」


「断じて許されることではないぞ!!」


「まだ言うかそれ」


 静まりきった段階で察してはいたよ。けどもう何度目だ。五回以上はやっているぞこのやりとり。


 まあ、状況を簡単に説明するとだな。リリスっていうのは今朝俺を起こしてくれた子で、コイツらはリリスが好きなんだ。にもかかわらず、俺がリリスと同棲を始めたから嫉妬で怒っているというだけの話。


 良い年したおっさんが十五歳の女の子に恋とか、正気を疑うね。そんなんだから結婚できな──これ以上は危険だ。やめておこう。殺気を感じた。



 とまあ、仲良く話をして満足してから家に帰った訳だ。

 問題はその後。ベッドに入って寝ようとした時に気付いた。



「あれ、そういえばリリスのやつ。まだ帰ってきていないな」



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る