婦人科へ行く

10月22日(月)


 夜、夫が仕事から帰宅後、二人で近くの婦人科へ向かった。

 そこは旅行前にピルを処方して貰った婦人科で、さばさばした女医先生が診てくれるので、いつもとても込み合っている。


 一時間半後、やっと診察になった。



「前に貰った生理を遅らせる薬を飲むのを止めても、生理が来なくて、妊娠検査薬を使ったら陽性が出て」

 ピルを貰うとき、問診で妊娠の有無をチェックする欄があって、私は何の迷いもなく「無」にチェックを入れていた。


「まずは妊娠しているかどうか、診察をしよう」

「下着を脱いで、椅子に座ってください」


 私は、これが大嫌いだ。酷いストレス。



「ああ、妊娠してるねぇ。どうする?見るならモニターつけるし、嫌だったらつけない」


「……一応、見ます」


 子宮の中に、小さな点があった。




「じゃあ、旦那さんも呼んで一緒に話そうか」





 夫が来て、先生が私の飲んでいた薬の説明書を見せた。


「ここに妊娠中に服用した場合、生殖器異常が起こる可能性があるって書いてあるね。ただ、あなたみたいに妊娠に気が付かず薬を飲んだ子がいて、それでも産みますって言って産んだら健康だった例もある。だけど、これは本当にわからないからね。正論を言うのは簡単だけど、これからの人生に関わる問題だと思うから」



「だいたい妊娠6週目だから、来週まで二人で(中絶するかどうか)じっくり相談しておいで」


 帰り道、「よし、今回は諦めよう」と夫が言った。



 正直、ホッとした。だって子供なんて育てる自信がない。



 実家の近くなら、助けてくれる親も友達もいるけれど、ここは大阪だ。

 夫は、いつまた転勤で全国に飛ばされるかわからない。


 自分が新しい土地に慣れるのすら大変なのに、子供の世話を一人でできるとは思えない。



 夜、酷いつわりで眠れない。不安が止まらない。



 中絶手術。



 あまりないことだけど、そのせいで子供が産めない身体になることもあると言われた。


 子供を産む気はないけれど、産めない身体になるのは嫌だ。

 でも、こんなところで子供は育てられない。妊娠して出産するのも怖い。



 怖い。怖い。




 どちらを選んでも怖い。

 誰か助けてほしい。


 怖くて怖くて、涙が止まらない。




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