第46話 外伝◆暗黒竜その7

◆メキカ帝国 32年前

アメリア視点


叡知の塔


そこは、誰が最初に呼んだのかわからないが、❪叡知の塔❫と呼ばれているらしい。

(らしい)というのは、帝国は公式の場で塔の存在を否定しているからだ。


しかし帝都に来れば、中央区からでも塔の先端が見え、その存在は隠しとうせるものではない。

だから、帝国はとある貴族の所有物で倉庫として利用されているとしている。


だが、貴族の私物である塔の警護に何故、帝国騎士が当たるのか、理解に苦しむところだ。




ガラガラガ、キイィィッ

馬車が停車した。

塔に着いたようだ。

馬車のドアが開き、騎士が手招きしている。

騎士の手を取って、馬車を降りる。

そして、見上げた。


ようやく着いた。

ここが目的地、叡知の塔。

本当に高い。

一体、何の為の建物なのか。


ふと、誰かの視線を感じ、顔を上げた。

塔の入り口に人影がある。



「これは、わざわざのお出迎え、恐悦至極にございます」

マリアさんが挨拶した。

私も合わせてお辞儀する。


遠目だが黒髪!の女性?なら、皇族だ。

やはり、秘匿された皇族がいた。


私がそう思い、1歩、前に出た時だった。


ドカッ、「うわぁ?!」

突然、騎士が吹き飛び、私は何者かに俵抱きされていた?!

え、ええ?


「アメリア!!」

「動くな!この娘の命が惜しければ、誰も動くな!」

う、マリアさんの叫びと、男の声が聞こえる。


く、苦しい。

私は、何者かに捕まったようだ?!

俵抱きで私の視界は下向き、地面しか見えず状況が掴めない。


「女神様!ようやく、ようやくお姿を見る事ができました。どうか我らの神殿に、本来、居られるべき場所に参りましょう。そして、このような場所に、我らの神を監禁する帝国に正義の鉄槌を!」

男の言葉が辺りに響く。


女神様?

今、女神様って聞こえた?!

私は、何とか前を見ようと、必死に頭をもたげた。


すると、あの黒髪の女性が何か、黒い棒を此方に向けている?

黒い棒?


パンッ


え?黒い棒の先端が光ったら、大きな音が?「あ、きゃあああ!?」

ドサッ、私を男が放り出した!??


「ぐわあああ、め、女神様?!な、何故、私に神罰を下される?私は貴女様をお救いに参ったのですぞ!な、何故だぁ!!」

男は、足から血を流していた。

倒れた男は、騎士達に取り押さえられる。


「アメリア!大丈夫ですか!?」

「は、はい。少し、擦りむいただけです」

マリアさんが、抱き起こしてくれた。


「ま、魔法だ」、「女神の魔法だ」

男を拘束した騎士達が、目を丸くして話している。

魔法って?!


「大丈夫でしたか?」

綺麗な声が聞こえた。

私は、声のする方に顔を上げた。




夜のような黒い、でも、太陽の光で艶やかに輝く髪。

そして、顔立ちは神々しく美しく、まさに女神の様。

女性の理想像の様な方が、其処にいた。




「は、い」

手を差し伸べられ、迷わずその手を握った。

温かい、間違いなく生きている人間だ。


「とにかく、塔の中へ。まだ、近くに仲間がいるかもしれないわ」

「は、はい。有り難うございます」

「はい、有り難うございます」

私とマリアさんは、黒髪の女性に急かされ、共に塔の入り口に向かった。



◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



塔の中は、意外と光が入って明るかった。

女性は、私達を小さな部屋?の様なところに案内する。


護衛の騎士達は、塔の中には入ってこないみたいだ。

他にメイドも執事も居ない?塔の中は、静かで私達以外、居ない?


私達がその小さな小部屋?に入ると、女性が何やら左右から、扉の様なもので小部屋を塞いだ。

そして、手前にある棒を前に倒した。


ガコンッ、ガランガランガランガランガランガラン

その途端、激しい音とともに部屋が揺れ、周りの壁が下に動いていく?!

「は?!ひっ!ま、マリアさん!部屋が揺れてます!」

私は、気が動転してマリアさんに叫んだ。


「大丈夫です。部屋が上に動いているだけです。落ち着きなさい、アメリア」

「部屋が動く??」

マリアさんは、冷静に私に言って普通に立っている。

私は、今にも座り込みそうだ!


「これは、エレベーター。昇降機ですわ」

「えれべ?」

「人を乗せて、塔の上に運ぶ機械です」

驚く私に、黒髪の女性が言った。


部屋が動いて人を運ぶなんて、信じられない。

これも、この方の魔法?この人、本当に人間なの?


ガラン、ガランガラン、ガンガン、ガシャン


部屋が止まった?辺りが静かになる。

女性は、左右に扉の様なものを開くと、私達に言った。




「着きました。塔の最上階です。此方に」

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