-51- 「ねこぜ入道」

 家の中を、うろうろ歩き回るイキモノ。


 中年のおじさんみたいだけど、とても背が高くて、首が天井につかえるから、いつも猫背で歩いてる。


 何がしたいのかわからないけど、家の中をのしのし歩いてる。


 ある時、何故か立ち止まって、家計簿をつけてるお母さんをじっと見下ろしていた。


 そいつがお母さんに何をするつもりなのか、お母さんに何て言えばいいか、思いつかなかった。


 すると、そんな僕にお母さんが気づいた。


「何? また私のそばに何か見えるの?」


 その通りなのだけど、それを言ったら、また怒るだろうと思った。


「忙しいから、後にしてちょうだい。女手一つであんた達を育てるのは、大変なのよ」


 そう言って、お母さんは家計簿に目を戻した。


 そんなお母さんを、お父さんは悲しそうに見つめていた。


 結局、猫背のそいつは特に何もしなかった。










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