-49- 「グレムリン」

 お父さんと車で出かけたとき、車が急に動かなくなった。


 お父さんは車の前を開けて、「おかしいなあ、こないだ車検を受けたばかりなのに」と言いながら、色々機械を弄っていた。


 お父さんの脇から車の中を覗いていると、機械の奥から目玉が二つ覗いていた。


「あ!」


 僕が思わず声を上げ、そいつを指さした。


 僕の声にびっくりしたお父さんが、工具を取り落としてガンと大きな音がした。


「お父さん、機械の奥に何かいるよ。きっとあいつが車の調子を狂わせたんだよ」


 そう言って、そいつの方を指差さしたけれど、さっきの音にびっくりしたのか、そいつは既にいなくなっていた。


「あー、逃げちゃった」


「何かいたのか? まあでも、悪さしてる奴がいなくなったのなら、車も直ったかもしれないな」


 車の前を閉めてエンジンをかけると、もうすっかり直っていた。


「ひょっとしたら、グレムリンって奴だったのかもしれないな」


 お父さんは、運転しながらそう言った。









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