(-_-メ)和)(吏`・ω・´)(@*’▽’) 通じ合いトライアングル。

(-_-メ)和)


「お疲れ」


 二俣ふたまた家のマンションから出てきた俺を、ここまで送ってくれたお隣の看護師が出迎えた。


「終わった?」

「はい。とりあえず大丈夫みたいです」

「じゃ、行こまい」


 路上に停車していた軽自動車が走り出す。


「ありがとうございました」

「おうよ」


 夜勤明けで寝ているところを叩き起こして車を出させた高校生に何も訊かず応じてくれた彼女に礼を言う。


「……なにも、お返しはできませんが」

「……へぇ」

「なんです?」

「いや、なんかええなぁって」

「はい?」

「な~んでもない。ま、お礼はいいけど、助手席ではずっと話しかけてね。夜勤明けのこの時間が一番ねみぃんだわ」

「自分の身を守るためにも、そうします」


 適当に話しかけ続けながら、俺は頭の半分で別のことを考える。


 恐らく今現在、介護士が締め出しを食っているので、そこは平謝りするとして。


 授業のことは、ナガサが上手く言ってくれているだろう。大丈夫。


 問題は、吏依奈りいなのことだが―――。


 俺は彼女にこう提案していた。


「ナガサにも、勉強のことだけは話してみないか」


 と。


 テストで良い点を獲ったら伝える話を、前倒ししようということである。


 とりあえず考えておいてくれと言った。


 あの様子だと、きっと大丈夫だろう。


「ねぇ、ヒーくん」

「はい?」


 運転席のお隣さんから声が飛んできた。


「なんか話せとは言ったけどさ、二俣さんの話ばっかになっとーせんか?」

「ほぉですかね?」


 ほぼ無意識で話していたので気付かなかった。


「あとさ、マウスガードどうした?」

「あ」


 訊かれてから気付き、顔を確認した。


 つけてない。


「忘れてました」

「あはは!」


 朝っぱらから素顔で出歩いたのは初めての経験だった。


「まぁ付けるのも忘れるわな。見たことないほどド焦ってたし」

「そうでした?」

「あんな縋るような目ぇされちゃ、眠気も飛ぶわ」


 そうだったのか。


「それも、二俣さんのためなんでしょ。くぅ~イケメンがよぉ!」

「あの、嬉しそうなのは良いんですけど走りながらクラクション連打するのやめましょう最近どの車もドラレコバリバリ回ってるんで」

「たまにはええて!」


 これが医療従事者の姿か? 医学部志望としては少し不安になる光景だった。


「そういや、二俣にも言われたな」

「なにを?」

「いや、俺の素顔は『意外とイケメン』らしいです」

「~~~!!」


 次の瞬間、お隣さんが急にスピードを上げるのだからたまらない。


「ヒューッ!!」

「ちょ!? いきなりアクセル踏み込まんでくださいよ!」

「走り出してゃ~気分なんだがや! 青春よ青春!」

「車でやる青春突っ走りは前科者への最短距離でしかないですよ!」


 ちなみに、前科があると医者にはなれないらしい。


 看護師は、どうだったかな?






(吏`・ω・´)


「姉さん。私、言わなきゃいけないことがあるんだけど」

「ふぁに?」


 二度寝から起きた姉が、私の不格好なオムライスを貪るように食べている。


「私ね―――」


 記憶喪失について伝えた後の話は、あまりしたくない。


「ぶぇぇぇぇぇ!!!!」


 姉が慟哭どうこくと共にボトボト落としたオムライスを掃除するのに必死だったし。


「なんっでだまっでんだよ゛おおおおお!! わだじだぢのぜいだよ゛おおおおお!!!!」」


 まるで仲間を失った獣のようだ。


 そして、なんか分かった気がする。


 くるりへの私の態度ってこんな感じか。


「お姉ちゃん、吏依奈に厳しくし過ぎだったね。怠けてるわけじゃなかったんだもんね」

「それは、別にいいわ」


 怠け癖というか甘え癖があるのは否定できないところだったので。


「でね、今度からは相楽くんのほかに、もう一人友達が来るかもしれないから。その子にも、事情を少し話そうと思うの」

「私は今、神話を見ているの?」

「オーバーが過ぎるわ」


 この過感動なところは二俣の血筋だったか。


「吏依奈、いいけど無理はダメだよ?」

「分かってるわ」


 くるりに話す、か。


『俺たちお互いに、もう少し人を信じてやってみないか』


 私の事情を知っている唯一の人物だった彼に言われた。


「先生に言われちゃったら、しょうがないわよ」

「そう」


 姉は、彼女本来の性格である柔和で優しい笑みを見せて言った。


「でもね、お姉ちゃんはそれだけじゃないと思うな」

「なによ」

「相楽センセ―――いやいや、相楽秀和ひでかずくんが言うことだから、信用できるんでしょ」

「……ッ!!」


 言われて、私は少し虚をつかれた気分だった。


 そうなのかな。


 分かんない、けど。


 彼が言うなら大丈夫というのは、確かにあるかもしれない。


 そして、くるりもきっと受け入れてくれるはずと、そう信じていた。






(@*’▽’)


 朝にカズくんから送られたメッセージを見たときは少し驚いたけど、心配はしなかった。


 実際に、そう書いてあったからだ。


『大事にはならないだろうから、心配するな』


 彼がそういうのなら、わたしはその通りにするまでだ。


 そして、一時間目が終わったのと同時に彼は登校してきた。


「ナガサ、朝から手間かけさせて悪いな、ありがとう」

「いいってことよぉ~!」

「……なんかキャラ違くない?」

「う~ん、なんかね、昨日吏依奈と電話してからこのテンションが戻らなくてね」


 器用じゃないのだ。カズくんにもわたしのこういうところには慣れて欲しい。


「あと―――」

「ん?」

「―――いや、やっぱりいいや」

「そっ」


 カズくんが何かを言いかけたがやめたので、わたしも深追いはしなかった。


 何か吏依奈が言いに来るのかな。


 何かを隠してるのは知っていた。


 勉強が苦手そうなのな理由かな。


 本人は「バレてない」と思ってるらしかったので、詮索はしなかったけど。


 そんで。


「おはよう、くるり」


 三時間目が終わったところで、彼女も遅刻登校だ。


「おはよう、吏依奈。……うふふ!」

「なぁに?」

「話を聞こうじゃないか! さぁさぁ!」

「……相楽くん、なんか今日のくるり、キャラ違くない?」

「だろ?」


 そうそう。


 妙にこうして気持ちの通じ合っているカズくんとの関係についても聞かせて欲しいなぁ。


 わたしを除け者にして、どんな楽しいことをしていたのか、聞くのが楽しみだった。


【続く】


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