異世界もふもふカフェ/ぷにちゃん

            【もふもふカフェ一周年】



 パンパーンと、大きなクラッカーの音がもふもふカフェに響く。太一とヒメリ、それからグリーズや商人など、常連の何人かが一斉に鳴らしたのものだ。

 今日は、太一がもふもふカフェをオープンしてからちょうど一年。せっかくなので、盛大にお祝いしようとパーティーをしている。


 太一がシャンパンをちびちび飲んでいると、足にもふっとした何かが絡みついてきた。見ると、白金色の綺麗な毛並みの尻尾だった。

「ルーク! どうしたんだ? ご馳走いっぱい用意したんだぞ~」

『あいつらは、オレが食べようとするとガン見してくるから嫌だ!』

「あぁ……」

 それはきっと、ルークの食事シーンがレアすぎるのでみんな注目してしまうのだろう。ルークはカフェにいるとき、たいていビーズクッションで昼寝をしているから……。

 とはいえ、太一は別に無理やり仲良くさせようとは思っていない。もふもふカフェではあるが、従魔がゆっくり過ごせる空間であることも大切だからだ。

『ふんっ』

 ルークはぷんぷんしながら、太一のすぐ近くにビーズクッションを持ってきて落ち着く体勢に入ってしまった。

(でも、側にいてくれるんだな……可愛い)

 ツンツンツンツンデレは一年経っても健在のようだ。


「タイチ、飲んでる~?」

「あ、ヒメリ。いただいてるけど……店主なのに、飲んじゃっていいのか不安だよ」

「真面目だねぇ。こういうお祝いのときは、一緒に楽しまなきゃ!」

 太一は普段の仕事態度が真面目すぎるので、もう少し力を抜く方法を覚えた方がいいよ! なんてヒメリがアドバイスをしてくる。

 年下の女の子に心配されてしまうとは……と、太一は苦笑する。

「ヒメリこそ、今日はたくさん食べてよ。ケーキとかお菓子も、とっておきを用意したんだからさ」

「そう! それだよ!! あんな美味しいケーキ、初めて食べたんだけど!? 苺が載ってるやつは大人気でも、もうないよ」

「えぇっ!?」

 ヒメリの言葉に、太一は驚く。だってまさか、ホールで用意したケーキがもうなくなっているなんて……!

(女性のスイーツ好きは恐ろしい……!!)

 太一が用意したケーキは、スキルを使って日本でお買い物をしてもらったものだ。なので、この世界のケーキより格段に美味しいのだ。

 ビュッフェスタイルの料理をちらっと見ると、すごい勢いで食べられていた。あまりにも料理が美味しすぎて、ゆっくりお喋りをしている余裕がないようだ。

「すごいな、みんな」

「私もケーキ全種類食べちゃったよ!」

「いつの間に!?」

 さすがはヒメリ、ちゃっかりしている。

 もしかしたら、あとで料理の追加をしないといけないかもしれない。ケーキはお買い物スキルを使うので難しいかもしれないが、レトルトの料理はまだ奥に在庫がいくつかあったはずだ。

「……まあ、楽しんでもらえて嬉しいよ。俺が一年もこうやって頑張ってこれたのは、みんなのおかげだし」

 それを思えば、料理くらい好きなだけ食べてほしい。

「私も、一緒にもふもふカフェができて嬉しい」

「ありがとう、ヒメリ」

 ヒメリには従業員として大変お世話になっているので、最大限の感謝をしなければならない。

(今度、ケーキをプレゼントしよう。あ、それを考えるとルークにもドラゴンの肉を使った何かをあげないと駄目かも)

 ドラゴンのことを考えると大変かもしれないが……太一は異世界で楽しい毎日を過ごしている。

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