地球防衛同好会

ねずみタイム

スーパー戦隊とは無関係です

EP1 ヒーロー同好会

第1話 いきなり変身!?説明不足な初バトル

 英雄学園は国内有数のエリートが集う高校で今日はその入学式の日だ。この高校には文武両道な生徒が通うので部活動も盛んだ。なので有名無名に関わらず新入生を確保するために色々な部活が勧誘活動をしていて大盛り上がりだ。


 そんな喧騒から離れた場所に空藤セキトは居た。セキトは部活に入る予定はなかったが1つだけ気になる同好会があったので、その部室を探して勧誘活動で、もぬけのからとなり、静けさの漂う部室棟を歩いていた。


 「ここかな?」


 セキトは目当ての部室を見つけた。セキトが訪れた部室は『ヒーロー研究会』という同好会の部室だ。部室棟の奥の方にあったので辿り着くまで手間取ってしまった。


 「失礼します」


 セキトが部室に入ると部室の中央に置かれた机の上に「新入生へ、どうぞ席に座ってお待ちください」と書かれた紙が置かれており、それに従ったのか2人の先客が座っていた。


 「もしかして、新入生代表のセキトくんだよね!君もこの同好会に入会希望なの?」


 セキトに声をかけてきたのは明るそうな雰囲気とそんな雰囲気に負けない明るい金色の髪を後ろで束ねたポニーテールの女子だった。


 「あっ自己紹介が先だよね、ウチの名前はね・・・」


 「確か、明智キナコさんだよね」


 「何で知ってるの!?」


 キナコはセキトが自分の名前を知っていることに驚いた顔をした。


 「クラスメイトだからだよ」


 セキトの言う通りセキトとキナコは同じクラスだ。だがそれが理由であることにキナコは違和感を感じた。今日はまだ初日でクラスでの顔合わせも簡単なホームルームのみで、自己紹介は翌日になっている。有名人のセキトや隣同士なら兎も角、ほとんどのクラスメイトの顔と名前が一致しないのが普通だ。


 「いやいや、幾ら同じクラスでも、まだクラスで自己紹介もしてないのに、名前なんて分かるか?」


 キナコの代わりにセキトの返答に対する疑問点を指摘したのは、校舎裏でタバコでも吸っていそうな風貌の茶髪に男子だった。


 「席表で名前は確認したからね。あとは教室で実際に顔を見れば、クラスメイトを全員、把握できるよ」


 「オレの名前は?」


 「蒼寺ソウジ君だよね」


 「マジかよ!スゲー!」


 ソウジもセキトと同じクラスだ。ソウジはセキトの返答を聞くと素直に称賛した。どうやらソウジは座り方なども足を組んだりせず、お行手を膝に置いて椅子に座っていたりなど、不良のような見た目に反して中身は普通なようだ。


 「流石は新入生代表だよね」


 新入生代表は明確に公言はされてるわけではないが、入試で最も成績が良かった者がなり、入学式で挨拶をする。セキトはエリートが集う学園の新入生のトップということだ。


 「そんなセキトくんに質問いい?」


 「勿論いいよ」


 「セキトくんもヒーローが好きなんだよね?」


 セキトが訪れた部室は『ヒーロー研究会』の部室だ。それなら当然ヒーローが好きだと思うだろう。


 「実はあんまり好きじゃないんだ」


 「セキトくんもなの!?」


 「も?」


 「ソウジくんも好きじゃないんだって」


 どうやらソウジもセキトと同じでヒーローが好きじゃないのに『ヒーロー研究会』の部室を訪れたらしい。


 「まさかセキトくんも理由はわからないけど、運命を感じたとか言うの?」


 実はそうだ。セキトは部活や同好会に入るつもりはなかったが、偶然見つけた『ヒーロー研究会』のポスターを見つけて、何故か無性に気になりこの部室にやってきた。


 「明智さんもなの?」


 「ウチは違うよ!ウチは純粋にヒーローが好きでここに来たんだから。セキトくんと同じなのはソウジくんだけだよ」


 「廊下に貼ってあったポスターを見てたら無性に興味が湧いてな」


 どうやらソウジもセキトと同じ理由でここに来たらしい。


 セキト達3人がそんな感じで談笑をしていると、部室のドアが開かれて新たな人物が入って来た。その人物は炎のように赤い髪を後ろで2つに結んだ女子だった。


 「よし!揃ってるな!」


 「もしかしてこの同好会の先輩ですか?」


 流石のセキトも別のクラスの同級生までは完璧には把握していないからか、キナコとソウジの時よりは自信なさげに質問した。


 「そうだ。アタシはこの『ヒーロー研究会』部長の遠条アカネだ」


 「ウチは!」


 「明智キナコだろ?」


 元気良く自己紹介をしようとしたキナコだったが、それはアカネに遮られた。


 「アカネちゃん先輩もウチの名前を知ってるの!?」


 「なんだその呼び方は?まぁいいか、お前達のことは知ってる。そこのチャラそうな方が蒼寺ソウジで背の低い方が空藤セキトだろ」


 「背っ!?」


 セキトの身長は高校生にしては低めであり、本人もそのことを気にしているようで、ショックを受けた顔をしていた。


 「新入生代表の空藤だけならともかく、オレや明智のことまで知ってるんすか?」


 ソウジの方は自分の風貌に対する自覚があり、その上であまりそのことを気にしていないのか、構わず話を進めた。


 「あぁ、何たってお前らは『星守りの戦士』に選ばれた3人だからな」


 アカネの言葉を聞いてセキトが頭に疑問符を浮かべた時だった。


 「アカネちゃん先輩!!それ本当ですか!」


 広くない部室に響き渡る大きく嬉しそうな声をキナコが上げる。


 「『星守りの戦士』って確か、地球を侵略する宇宙人と戦ってる奴らだよな。それにオレ達が選ばれたって言うんすか?」


 この地球は現在、様々な宇宙人に狙われていた。その宇宙人から地球を守っているのが『星守りの戦士』だ。


 「そうだ。新入生代表くんも分かったか?」


 「分かりましたけど、分かりませんよ」


 セキトも自分にしては抽象的な返答をしたという自覚がある。だが仕方がない、何故ならそうとしか言いようがないからだ。『星守りの戦士』のことはセキトも知っている。だがそれに自分が選ばれたなんて話は理解が難しい。


「えぇー、セキトくん、こう言うのはニュアンスで理解するものだよ」


「乗り気なお嬢ちゃん、飲み込みが早いのはいいけど、新入生代表くんみたいな反応が普通なんだぞ」


 「キナコって呼んでください!2人も明智さん何てよそよそしい呼び方じゃなくて、キナコって呼んでよ。だって、これから一緒に戦う仲間なんだから」


 「いや、オレは『星守り戦士』になるなんて言ってねーよ」


 「嘘!?何で?」


 ソウジの言葉を聞いてキナコは驚いた表情したが、セキトは少し安心した。どうやらソウジもこの事態を安易に受け入れたわけではないらしい。


 「その話がオレ達をからかう先輩の冗談とかの可能性は置いといてだ。宇宙人と戦うなんて危ないだろ」


 「まぁ参加は自由だ。お前が断れば、運命に導かれた別の奴が来るだけだからな」


 「運命に導かれた?」


 「新入生代表くんはヒーローが好きでここに来たのか?」


 「いえ、この同好会のポスターを見たら、急に興味が湧いて」


 「そいつがアタシ達の言う運命だよ」


 ソウジはアカネがセキト達をからかう為の冗談を言っている可能性を置いておくと言っていたが、セキトはその可能性を捨てていなかった。しかし、今のアカネの話を聞いたことで冗談ではない気がしてきた。


 「参加が自由ならオレは帰らせてもらうっす」


 「まぁ待て、勿論タダではとは言わないさ。ちゃんと報酬が・・・」


 ピー!!っとアカネが腕につけている腕時計にしては厳ついイメージのある機械が何かを知らせるブザーを鳴らす。


 「どうやらお出ましみたいだな。説明は後だ取り敢えずは現場を見せてやる」


 セキトが部室に辿り着く少し前まで時間は遡る。その頃、地球の衛星軌道上に新たな侵略者の乗る宇宙船が現れた。


 「あれが地球か」


 侵略者達の名前は『マジン軍団』。ボスであるダイマジンを筆頭に様々な星を侵略してきた侵略者達で、今度はその標的を地球に定めた。


 「奴らや道化のマジン様の言う通り、確かに生命体が存在するようです」


 膨れ上がった筋肉が岩のような印象を見せる怪人が、石像に報告をしている。この石像こそが『マジン軍団』のボスであるダイマジンだ。


 「こんな酸素もなく、紫外線が降り注ぐ銀河に生命体が居るなど、あれがあるからに違いがない、奴らの言うことも本当のようだな」


 「いかがいたしましょう?隠密に探しますか、それとも」


 「当然!侵略して奪い取る」


 「かしこまりました」


 そして指示を受けた怪人が地球に降り立ち侵略を開始する。怪人の名前は怪力のマジンと言って、その名の通り力が自慢だ。怪力のマジンはその腕力で訪れた町を破壊しようとする。そこに邪魔者が現れた。


 「そこまでだ宇宙人!」


 「何だ貴様は?」


 現れたのは炎のように赤い髪を後ろで2つに結んだ少女だ。


 「噂には聞いてるだろ?地球を守る正義の味方さ」


 「まさか、貴様は!?」


 「変身!!」


 少女が掛け声とともに腕につけた機械のボタンを押すと、少女の全身を赤い光が包む、光が消えると、そこには赤いスーツに身を包む戦士が立っていた。


 「貴様が奴らや道化のマジン様の言っていた星守りの戦士だな」


 「正解だ。今なら見逃してやるがどうする?」


 「たわけが!行け量産天使ども」


 「ピコーん!」


 怪力のマジンの掛け声によって、何処からともなくと現れた白装束を着た天使のような格好のロボット達が現れて、赤いスーツの戦士に攻撃を仕掛ける。


 「またそいつらか、もう見飽きたっての」


 赤いスーツの戦士は怯むことなく、量産天使の軍団に突っ込んでいく、そして数の不利など感じさせない圧倒的な戦闘力で量産天使達を倒して行く。


 「役たたずどもめ、こうなれば我が相手だ。貴様らは破壊活動に専念しろ」


 「ピコーん!」


 その戦いを少し離れた場所で見守る高校生達が居た。その高校生達こそセキト達3人だ。


 「すごい!すごいよ!まさかアカネちゃん先輩の正体が星守りの戦士の赤の戦士なんて」


 「でも星守りの戦士ってのは、3人なんだろ。他の2人は何処だ?」


 「2人とも見るんだ!一杯居る奴らがこっちにも来たみたいだ」


 アカネが食い止めきれなかった量産天使達がセキト達の方にも来た。


 「よーし!ウチも戦う!」


 「「えっ!?」」


 正直、状況について行けてない、セキトとソウジを他所に興奮気味なキナコが単身で量産天使の軍団に突っ込んで行った。


 「マジかよ!?」


 ソウジはキナコが生身で戦いを挑んだことで悲惨な光景を想像したがそうはならなかった。なんとキナコは生身で量産天使達を相手取って戦っている。その様子はまさに無双と呼んで差し支えなく、量産天使達を正しくちぎっては投げている。


 「どうするよ空藤?流石に女の子を1人で戦わ・・・空藤?」


 ソウジが自分達も戦うかセキトに相談しようとすると、そこにはセキトの姿はなく、何処かに走っていた。


 ソウジはその光景を見た時、セキトが逃げたのかと思ったが違った。


 「くらえ!」


 「ピコーん!」


 セキトは走った勢いのまま、キナコから離れたところに居た量産天使にタックルを仕掛けた。量産天使はそれにより吹き飛ばされる。


 「大丈夫ですか?逃げてください」


 「ありがとうございます!」


 どうやらセキトは逃げ遅れて量産天使に襲われている人を見つけて助けに行ったようだ。セキトは今度はキナコが戦ってる方へ走って行った。


 「やるじゃん!オレも負けてられねーな」


 セキトとキナコの元にソウジも合流する。しかし、多勢に無勢なこともあり3人は徐々に押され始める。


 「このままじゃ」


 その時だった。3人のもとに赤い何かが突っ込んで来て、量産天使達を蹴散らした。


 「お前達、初日から大活躍だな」


 「遠条先輩!」「先輩!」「アカネちゃん先輩!!」


 3人を助けたのは赤の戦士に変身したアカネだった。アカネは3人の方を向くと変身を解除した。


 「本当は今日は見学だけのつもりだったが、アイツぐらいなら初陣にちょうどいいだろう」

 

 「待ちやがれ、この我をコケにしやがって」


 セキト達の前にアカネを追いかけてきた怪力のマジンが現れる。


 「ということで、アイツはお前達に任せる」


 アカネはそう言うと自分の腕につけていた機械をセキトに、そしてポケットから出した同じ機械をソウジとキナコにもそれぞれ渡した。


 「そいつは星守りチェンジャー、名前の通りでそいつを使えば、星守りの戦士に変身できる」


 セキトは渡された星守りチェンジャーを躊躇わずに腕につける。


 「空藤!?」


 「まだ全部が理解できたわけじゃないけど、人を守ることなら断ることは出来ないよ」


 キナコは待ってましたとばかりに星守りチェンジャーを腕につける。


 「これでウチも正義のヒーローだ!」


 ソウジも少し躊躇ったが星守りチェンジャーを腕につける。


 「たくっ、しょうがねえな」


 3人は横1列に並び星守りチェンジャーのボタンを押す。


 「「「変身!!」」」


 セキトを赤い光が、ソウジを青い光が、キナコを黄色い光が、それぞれの色の光が3人を包む。光が消えると、そこにはそれぞれの光と同じ色のスーツを着た戦士が居た。


 「何だ貴様らは!?」


 「ほら、こう言うのはレッドからだよ」


 「えっ?」


 「もーう!ちょっと耳貸して、ソウジくんも!」


 キナコはセキトとソウジに2人に小さな声で何かを伝える。


 「それ、やんなきゃ駄目なのか?」


 「当たり前だよ。それじゃセキトくんから」


 「ちょっと照れ臭いけど、仕方がないか。赤の戦士!」


 「こうなったらヤケだ。青の戦士!」


 「そして最後に。黄の戦士!」


 「「「3人揃って、星守りの戦士!!!」」」


 「見れば分かるわ!」

 

 変身や名乗りを待ってくれた怪力のマジンだったが我慢の限界が来たのか3人に襲いかかる。


 「聞いてきたのはそっちだろ!」


 セキト達も怪力のマジンに応じるように戦う。


 「お前ら!剣か銃を持つイメージをしろ!」


 「こうですか?何か出た!?」


 セキトがアカネの言う通りにすると。虚空より剣が出現してセキトの手に握られた。


 「何それ!ウチもウチも」


 「それは星守りソードだ!銃をイメージすれば星守りガンが出るぞ!」


 「まっ、2人が剣ならオレも今回は剣でいいか」


 キナコとソウジもセキトと同じく星守りソードを虚空から呼び出す。


 「武器を持ったからって、我に勝てると思うな!」


 セキト達は3対1という数の理もあるが、初陣とは思えない実力を発揮して、怪力のマジンを圧倒する。


 「今だ!星守りソードに力を込めて必殺技を打つんだ!」


 「アカネちゃん先輩!その技に名前はありますか?」


 「はぁ?」


 アカネはキナコの突拍子もない質問が理解できずに、キョトンとした。


 「必殺技を使う時は技の名前を名乗らなきゃ!」


 「知らん!自分で考えろ」


 「2人ともまた耳を貸して」


 セキトとソウジの2人は取り敢えずはキナコに付き合うことにした。


 「「「星守りスラッシュ!!!」」」


 それぞれの色の光を纏った星守りソードから斬撃が光の刃となり放たれる。


 「この我がこんな星の奴らにー!?」


 光の刃は怪力のマジン命中し、怪力のマジンは爆発した。こうしてセキト達は見事に初勝利をおさめた。

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