一体どういうことだ。

なぜ、なぜこっちの姿になっている。


僕はあまりのことに動揺する。

そんな動揺が彼女にも伝わったのか、彼女は心配そうに尋ねてくる。


「だ、大丈夫?少し休む?」


「い、いえ、大丈夫です。」


心の中や頭の中では大丈夫じゃないのになぜか見栄を張ってしまう。

多分女の人の前では見栄を張ってしまう男の悲しい本能がそうさせたのだろう。


「そう言えば、なぜあなたはこの服装をみてVチューバーだと思ったんですか。まだコスプレをしている痛い奴だと思うのが普通ですよ。」


「そうなんだろうけど、私も同じだからさ。」


「え?」


「私もVチューバーなんだ。」


彼女のその発言で思い出した。

僕がさっき彼女のことを見たことがあると言ったがそれは街中とかではない、画面の中だ。

そして僕はついさっきも見た。


あの流れてきたネットニュース。

Vチューバー失踪事件の6人目の被害者。


それが彼女こと「如月モカ」だ。



そう考えるとなぜ彼女、如月さんはここにいるのだろうか?

如月さんはニュースによると中の人の捜索届も出されているというではないか。


なぜ?なぜ?なぜ?


疑問が膨らむ一方だ。



「如月さん、あなたはなぜこんなところに?今あなた捜索届など出されているのですよ。」


「うん、分かってる。だけど戻るつもりはない。」


「?一体どういうことですか?」


「詳しいことは後で話すから、ひとまず私についてきて。」


彼女はそう言うと黙って先を進み続ける。


僕はその間にも疑問をまとめ続ける。


まず、ここはどこなのだろうか?

なぜ、僕はこの「西園寺レオ」の格好をしているのか?

そして、失踪しているはずの如月さんがここにいるのか?


主な疑問はこんな感じだろう。

本当に訳が分からない。


僕がそう考えながら、如月さんの後を追っていくと彼女はある建物ような物の前で止まった。


「ここよ。」


「ここは?」


「ここは私のような人がたくさんいる場所よ。」


「?」


「まぁ、入って見たら分かるわ。」


そう言うと彼女は何もためらいなくその建物に入っていく。

建物というかドーム状の何かに入っていく。


僕も彼女の後を追って入る。



入ったそこはまるで「夢」というものを具現化したような空間だった。

自分の理想が現実になったかのようなそんな空間。


僕がそんな光景にあっけを取られていると別の方向から声を掛けられる。


「モカー!その子誰ー!」


「新しくこの世界に来た子。仲良くしてあげてね。」


「うん、分かった!よろしくね、新入り君!」


「あ、はい、よろしくお願いします。」


僕はいきなりのことにわけわからず声の方向にお辞儀をする。

その声の方からひょっこり顔を出したのはとてもかわいらしい顔をした少女。


するとその少女はパタパタとこちらに向かってくると僕の両手を掴んでぶんぶんと上下に振る。


「あたし、神楽ナツメって言うのよろしくね!」


神楽ナツメ!

どこかで見たことがある顔だと思ったがこの子もVチューバーだ。

それもVチューバー失踪事件の被害者。

まさか失踪事件の被害はみんなここにいるのか?


「ねぇ、君の名前は?」


僕が驚いている間も彼女は尋ねてくる。


僕の名前か・・・

ここでは本当の名前よりも偽りの名前を言った方が良いのだろう。


「僕の名前は西園寺レオって言います。よろしくお願いします。」


「うん、礼儀正しい子はあたし大好きだよ!よろしくね、レオ君!」


レオ君、か。

なんだか複雑な気分だ。

ネットの中だとコメントで言われてもあまり気にしないのに、こうやって面と向かって言われると不思議な気持ちになる。



それにしても、ここは一体何なんだろうか。

失踪した人がVチューバーの格好をしてここにいるし、なんなら僕もVチューバーの格好をしている。

そして、最初の光は一体・・・



「やぁ、君がこの世界に新しく来た子かな。」


いきなり澄んだ声が響き渡る。


すると奥の方からある1人の男が現れる。


僕はその男の顔を見て驚愕する。

なぜ、なぜ、彼がこんなところに?


そこにはいたのは失踪事件の最初の被害者、「東雲ユウキ」だった。

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