第44話 伝説のドラゴン

 4月27日 7:45

 デイジーが落とした火が爆薬に触れた瞬間、マインドフリーの体は血を吹き飛ばして大きく爆発した。その勢いで近くにいた魔物は体の一部を吹き飛ばし、損傷の激しかったものは少し痙攣した後、もうピクリとも動かなくなった。

 残りの魔物はあと僅か。俺とセージはデイジーが作ってくれた爆薬を魔物たちの口の中に入れ、魔物が口を開けたタイミングで金縛りの魔法をかけた。あとはデイジーが松明を真ん中にいた魔物の口の中に落として二度目の爆発を起こした。

 周りの魔物の口内でも次々と爆発が起きていき、全ての魔物の頭が吹き飛んだ。

 魔物の全滅と集合を伝えると、避難していた仲間たちが瞬時に戻ってきてくれた。

 「陛下、無事に戦争は終わったようですね。国民を家に返しましょうか。」宰相のクリス・ジョンソンが聞いてきた。

 「いや、だめだ。まだ終わってない。本当にすまないことをした。」

 「何故です?何をなさったのですか?」

 「あれを見ろ、そしたら分かる。」

 セージが指さした方向を見ると、海の方からドラゴンが物凄いスピードで飛んできていた。

 「まさか、陛下が封印を…?」

 俺が何も言えないでいると、セージが「マインドフリーって男に洗脳されてたんだ。それより戦闘準備に入れ。」とカバーしてくれた。

 ドラゴンは奇声を上げると森全体に向かって火を吹いた。

 バリアを作るなど即座に反応することができなかった者は焼け死んでしまった。

 自分の国民を殺された俺は腹が立ってドラゴンの上に滝を作り、水がそのまま流れ落ちてしまわないように水槽のようなバリアで囲んだ。

 水が満タンになってドラゴンの頭が見えなくなると、セージはバリアの蓋をした。「溺れろ溺れろ溺れろ!」焦りで額から汗を垂らしている。

 が、ドラゴンは水をゴクゴクと飲み込んだ。しかも、近くにいた数人の魔法使いたちをみんな食べてしまった。

 「学校にいるペリドットを全員呼んでくる。」マックは俺に言ってワープしたが、すぐ帰ってきた。「誰もいない!」

 「…は?」マックとアレクセイ以外のチームのメンバーが声を出した。

 すると、ドラゴンがボッと炎を漏らしながら笑い出した。「ここへ来る前に魔法が使えるやつはほとんど食って来た。何しろ空腹のまま封印されていたからな。まあ、一握りの魔法使いには逃げられてしまったが、そこそこ美味かったぞ。何故一般の国民は食べなかったかって?良心でも、不味いからでもない。」

 「ああ、僕たち二人しか残れなかった。」いつの間にか横には校長先生とエヴァンス先生がいた。

 「本当にすまない。一瞬のことで、誰も救えなかった。」エヴァンス先生が掠れた声で謝り、校長先生と頭を下げる。

 「頭を上げてください。何としてでもあいつを殺さないと。」

 俺の言葉に二人は頭を上げ、「そうだな。」とドラゴンに向かってビームを放つ。

 ドラゴンは翼を動かして風圧でビームをガードし、こちらに向かって尻尾を降ってきた。

 運悪くエヴァンスとアレクセイとマックがそれに当ってしまい、地面に強く叩きつけられた。

 俺とセージは三人を助けに行き、校長先生はデイジーとキャシーに「そこにいなさい。」と言うと、ドラゴンを見て構えた。「僕が相手だ。」

 

 

 


 

 

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