第5話 注文ーVer.しゅんすけー

「な、何か飲みますか?」


バーと言ってるんだから飲み物がメインなのだろうか。

よくわかんないけど、最初に出されたお水を飲みきって喉が乾いてきたので、お飲み物をおすすめしてみた。


「…………。」


ふぶきさんはテーブルに置かれたメニューを凝視してだんまり。


あぁ無視されてるわけじゃなくて悩んでるのね。

初手からガン無視だったら俺泣くところだったよ。


さて、俺も何飲むか考えるか。


酒は苦手だからノンアルがいいけど…………正直美少女と相席バーで二人切りなんてシチュエーション。


お酒の力無しで乗り越えられる気がしない。お酒を飲むと何故か記憶なくなるけど、少量なら多分行ける………と思う。


「オレンジジュースで。」


ふぶきさんがはっきりと言った。


「お酒苦手なんですか?」


普通成人してる人がバーに来たのなら少なからず、アルコールを飲むと思う。

なのにわざわざノンアルに行くとは彼女も俺と同じで苦手なのかなぁと思って、質問する。


「…………………あまり得意じゃないです。」


数秒のための後、ふぶきさんは若干恥ずかしそうにつぶやいた。


「なるほど。」


話の種になるかなとも思って尋ねたけど、本人が話したがらないのなら深堀りすることもあるまい。

別に、お酒が苦手なのは恥ずかしいことじゃないと思うけどね。


「すみません。」


俺は席の近くをウェイターさんが通りかかったのを見て、声をかける。


「如何なさいましたか。」


黒のタキシードを着たウェイターさん。カッコいいな。俺もこう言うのが似合うスタイルとお顔だったなら良かったな。

ふっ。現実は悲しいのさ。


「アップルカクテルとオレンジジュースを一つづつ。」


俺もせめてもで噛まずに一息でそう言い切った。

某有名カフェの注文はちゃんと言えた試しがないけど、これくらいなら俺でもがんばれた。


「かしこまりました。」


頭をすっと下げて去っていく本職の方は、やっぱり見惚れるほどにかっこよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る