第9話『赤い星』

「コ―ヒ―、もう一杯いかがですか?」

「ありがとうございます。いただきます。先生、1時間5000円でお願いしましたが時間がかなり過ぎまして……」「よろしいですよ」「すいません。助かります」「それより山口さん、左耳がありませんが?」「爆発にあったときにとれました」「そうですか。大変でしたね。それで今は?」「冷凍保存しています」「そうですか。それはよかった」

 

 それでは空間内外人口調整機能について説明します。「山口さん、私の耳たぶを見て下さい」「はい、右の耳たぶに金色のピアスが3個ついています。」「そうです。一つ1年だと思ってください。わたしの場合は少なくともあと3年はこの世界で生きなければなりません」「山口さんは……右の耳たぶだけで5個、それに左の耳たぶを確認しなければなりませんね」「え! 5年以上……」「残念ですが現実です」もとの空間と今の空間は密接に結びついています。こちらの空間は戦勝国であり、植民地支配はしていませんが領土は10倍です。財政赤字もありません。しかもウイルス対策も充分であり、人口の増加が最たる課題です。

 それで元空間は現空間に何かしらの罪を付けて送り込でいます。この罪とは法を犯したことだけに限りません。自分の享楽のために長年、人を悲しませた。非人道的な発言、行動をしたなど、基準が公表されずきりがありません。元空間には現空間に送り込んだ人数によってお金が流れているとのことです。

「う~ん、やっぱりお金か。じゃ先生、星の数の年数だけここにいるしか方法はないのですね」「いや、2つ手段があります。一つは星の受け渡しです。相手の星を受け取ることで渡した人を0にすることができます。それと確率変動、いわゆる確変になると星が5から0になったりします。ただどうすれば確変になるかはわかっていません」「はあ」「あと幽タイムというのがあってこの空間に長く滞在しすぎた方に発動し確変が始まります」

「それと赤い星を持つ人は刑事罰を犯した人です。本当の罪人とも言えるでしょう」

「失礼ですがもし差し支えなければ先生は何をされたのですか?」「……借金です。事務所が軌道に乗る前に借りたお金が返せなくて……」「そうですか。借金は罪なのですね」「そうです。罪です」

 生きていることすべてが罪に思えてきて、罰を受け続けて生きていくことにうんざりしてヘドが出そうだった。

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