<短編2> 「15歳のクリスマス」

  



 これはとある父娘の話。



「あのね、わたしね。ずっと知らなかったんだよ」


娘は父に向って話を始める。


「えっ?何の事だろう?」


急に話を振られた父は何の事が判らず、尋ねた。

父の返事を聞いて、娘は次の言葉を紡いでいく。


「わたしが4歳か5歳の頃にねサンタさんからプレゼントくれたでしょう?」

「そうだね」

「ぽぽちゃんっていう人形なんだけど、覚えてる?」

「よく覚えているよ」

「それでね嬉しくて次のクリスマスも楽しみに待っていたんだ。そしたら、パパがプレゼント持ってきてくれたでしょう?」

「うんうん」


娘の嬉しそうな表情を見て、当時の記憶がふつふつと思い出されていく。

この暖かな表情が急に鳴りを潜め、娘の声のトーンが落ちていく。


「でも、わたしの枕元にプレゼントが無かった。それはどうしてだろう?私何か悪い事をしたのかな?」


娘は悲しそうに、目を伏せて傾げる。

父は返事を急がず黙って娘の様子を見守る事にした。

娘は黙った父の表情を見て、話を再開していく。


「その時はパパからのプレゼントがあったので、サンタさんが来年にしたんだ」

「……」

「次のクリスマスにはまた同じように、パパからプレゼントがあった。PSPだったよね。モンハンでたくさん遊んだのを覚えている」

「よく覚えている……な」

「でも枕元には何も無かったんだ。どうしたんだろう?」

「……」

「今度こそサンタさんからプレゼントを貰えるよう、いい子になろう!」

「……」


娘は頑張ってパパの言う事聞いて、頑張ろうって決意したのだった。

それから10年。私の枕元にプレゼントが添えられる事は無かった。


「何故だろう?」


この事を幼馴染である友達に話してみた。そしたら……



「サンタさんはパパだよ」



の衝撃的な一言。

この一言で涙が出てきた15歳のクリスマスであった。


「パパ、ありがとう」


                         --Fin--

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