(三)

「ウソ!」

 私は叫んでいた。彼の部屋に遊びに来て、ランチを作ってあげて、一緒に食べた後のことだった。

 おなかがいっぱいになって、なんとなく落ち着いた雰囲気だった。そしてお互い黙ったまま見つめ合い、なんとなくそんな雰囲気になった。お互い体を近づけ合い、顔と顔を近づけた。鼻の頭と鼻の頭がぶつかりそうになったとき、彼が目をつぶった。

 そこで私は聞いたのだ。「昨日もあの女の人と、会っていたよね」と。

 すると、彼は「だから、あの人とはなんでもないんだよ!」と慌てて否定し始めた。

「ウソじゃないって。こうしてお前と付き合ってるじゃん」

「隠れて女を作ってたじゃない」

「だから、それは違うって」

 彼がそのことを否定すればするほど、腹が立った。でも彼のことだからきっとそれは事実なのだろうと頭のどこかでは思っている。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る