世界でたった1人の鬼才の魔法剣士 〜不遇を添えて〜

2次元くん

少年編

第1話 職業

「みんなは何の職業を授かりたい?」


田舎の村に住んでいる小さい子供の俺達には暇でもやれることが限られている。そんな俺達の話題は将来何になりたいかというのが定番だ。



「俺は勇者になってドラゴンを倒したいぜ!」


「僕は賢者になって魔法を沢山使いたい!」


「私は剣聖になって魔物をいっぱい倒したいわ!」


みんなの夢は大体こんな感じだ。どの夢も元になっているのは有名なおとぎ話である。おとぎ話の主人公は、勇者になってドラゴンを倒して姫と結婚したり、賢者や剣聖として国を守って国王様から爵位をもらって貴族になったりと英雄になっている。まだ世の中のことをよく分からない子供な俺達はおとぎ話の主人公に憧れている。



「ヌルヴィス、お前は何になりたいんだ?」


みんなの夢をただ聞いていた俺にも夢を尋ねてきた。俺はもう将来なりたいもの…いや、将来なるものは決まっている。



「俺は冒険者になって自由に生きる!」


そう答えると、みんな首を傾げた。多分だけどみんなはどのおとぎ話の主人公になりたいのかを聞きたかったのだろう。主人公が冒険者のおとぎ話は俺も聞いたことがない。でも、俺は自由に世界各地を移動しながら魔物を倒してお金を稼ぐ冒険者になりたい。








「ただいま!!」


「おかえりなさい」


元気よく家の扉を開け、俺は家の中に入っていく。


「早く特訓しよ!」


「父さんが狩猟から帰ってくるまで待ってなさい」


「はーーい」


昼間は母さんが家事をしているから遊びに行っていた。家にいると邪魔だから外に行けと言われている。だから家事が全部終わった頃に俺は帰ってきている。



「じゃあ父さんが帰ってくるまで冒険者の話をして!」


「はいはい」


俺が冒険者になりたいと思ったのは冒険者だった両親の話を良く聞いていたからだ。いつも話してくれる内容は子供の俺にはまるで夢物語のようだった。何にも縛られずに自由に世界中を旅して、強い魔物を倒してお金を貰う。それで得たお金も自由に使える。

村から勝手に出ては行けなく、貰える少しのお小遣いの使い道も無駄使いしないように制限されている俺には羨ましい限りだ。




「帰ったぞー!」


「父さん!おかえり!」


家のドアが開いて父さんが帰ってきた。俺は急いで玄関に向かった。



「特訓!特訓!」


「分かった、分かったから。とりあえず落ち着け」


「おかえりなさい」


俺が玄関に行って特訓をせがんでいると、母さんも玄関にやってきた。



「今日はボアが取れたぞ。血抜きはしてあるから適当に切り分けて近所に持ってってくれるか?」


「分かったわ」


「特訓!」


「ヌル、分かってるから。庭に行くぞ」


「うん!」


この村では大体の食べ物や服などの取引は近所同士での物々交換だ。そして月に数回くる行商人には村の物、それこそボアという2mほどの猪の魔物の皮などを売ってお金を得て、そのお金で村では取れない無いものを買っている。

ちなみに、父さんが呼んでいるヌルとは俺の愛称だ。



「よし、じゃあこい」


「やぁー!!」


俺は子供でも持てるような小さな木剣を持って父さんに向かっていった。


「ほら足ががら空きだぞ」


「あだ!」


そんな俺に父さんは剣の鞘で相手をする。そして大人気なく足を引っ掛けて転ばせられる。正直こんなのは傍から見たら子供とのお遊びでしかないが、俺は特訓という言葉に騙されていたので、とても楽しかった。



「やっぱり俺も本物の剣を使いたいな」


「それは職業を授かるまで駄目だと言っただろ?」


「分かってるよー」


前に1度こっそり父さんの剣を勝手に使おうとしたのがバレて怒られた。あんなに怒られたのは初めてで大泣きした。あれから勝手に父さんの剣に触る事はしていない。俺は今年で10歳になっているので、後は神官さんが村に来て職業を授けてくれるまでの我慢だ。





「ご飯だから2人ともそろそろ終わりにしなさい」


「おう」


「はーい!」


母さんからそう声がかかって父さんと2人特訓をやめて家の中へと向かった。


「2人とも止まってね」


玄関で俺と父さんは家の中に入るのを止められた。


「ウォッシュ」


母さんがそう言って魔法を使うと、特訓で何度も転んだせいであちこちに付いていた土埃が綺麗に無くなった。


「それじゃあご飯にしましょうか」


そして俺達家族は父さんが取ってきたボアとそれと交換で貰った野菜を食べた。




「ステータス見せて!」


「もう何度も見せたでしょ?」


「また見たいの!」


「はいはい」


夜は暗くなるので特訓はさせて貰えない。だから夜はよく両親のステータスを見せてもらっている。



「「ステータスオープン」」



【名前】 アレック

【種族】  人族

【年齢】  36

【職業】  剣士

【レベル】 54


【生命力】  760/760

【闘力】   480/480


【物攻】  324

【防御】  296

【敏捷】  317


【スキル】

・身体強化Lv.5・剣術Lv.4・解体Lv.3

・体術Lv.3 ……






【名前】 エマシー

【種族】  人族

【年齢】  35

【職業】  火魔法使い

【レベル】 52


【生命力】  510/510

【魔力】   730/730


【魔攻】  303

【防御】  259

【精神】  298


【スキル】

・生活魔法Lv.5・火魔法Lv.5・魔力操作Lv.3

・水魔法Lv.2・風魔法Lv.2 ……




父さんのアレックの職業が剣士で、母さんのエマシーの職業が火魔法使いだ。

ステータスを見て分かるように、物理職と魔法職で完全にステータスが別れている。これは剣士だから火魔法使いだからということで別れているのではない。どの職業でも完全に別れるのだ。例えばそもそも戦闘職ではない商人とかは物理職の商人と魔法職の商人とで2パターンある。


そして、物理職の【闘力】は主に身体強化に使われ、魔法職の【魔力】は魔法に使われる。

また、物理職の【敏捷】は文字通りの素早さで、魔法職の【精神】は魔法を準備する速度や精度などに関係しているそうだ。

ちなみに母さんが俺達が家の中に入る前に使ったのは生活魔法だ。それで汚れを綺麗にしたのだ。




「俺も父さんと母さんみたいに強くなりたいな」


「ヌルも俺達のように強くなれるから大丈夫だ!」


「ほんと!?」


「ああ。ヌルなら奇才のスキルだって目じゃないわ」


また、スキルには大きく分けて奇才、天才、俊才、秀才の4つに分かれている。これは職業を授かった時に取得しているスキルとで分かれる。


まず、職業を授かった時には最高でLv.3のスキルを授かる。そのLv.3が奇才スキルである。それに続いてLv.2、Lv.1の順に天才スキル、俊才スキルとなる。また、自力で新しく取得したスキルのことを秀才スキルという。

どの才のスキルも授かった時からレベルアップするまでの用力は変わらない。簡単に言うと、Lv.3で授かったスキルをLv.4にするのと、Lv.1で授かったスキルをLv.2にするのは同じ努力でいいということだ。だから元から強いLv.3のスキルを授かった方がより強くなれる可能性を秘めているのだ。


しかし、1つでもLv.3の奇才スキルを授かるのは全体の0.1%もいないと言われている。また、Lv.2のスキルでも10%未満で、Lv.1のスキルはほとんど100%らしい。もちろん、同時に複数のスキルを授かることもある。


ちなみに、父さんは身体強化をLv.2で授かり、剣術をLv.1で授かったらしい。そして、母さんは生活魔法と火魔法をLv.2で授かったそうだ。

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