第6話 レイジVS謎の少女

(――クッ、ここまで気配を消せるなんて、そうとうやばい相手だ……。下手するとやられるぞ、これは……)

 レイジは近づいて来る人物を察知。すぐさまポケットに入れていた護身用の折りたたみ式ナイフをつかみ、いつでも後ろを振りかえられるように。それは今後ろにいる人物がただ者ではないと、判断したゆえの行動だ。

 エデンでの戦場だとその地形の構造上どこに敵がひそんでいるのかわからないので、常に周りを警戒しなければならない。そのためこういう感覚は常人より研ぎ澄まされているのだ。それなのに今までレイジは後ろにいる人物の気配を、まったく感じられなかった。こうして気付けたのも後ろにいる人物がさらに一歩レイジに近づいて来たので、なんとか察知できたのである。

 今だ気配を消してレイジの様子をうかがっている状況から、相手はなにかを狙っているのだろう。もしこれが暗殺者ならばレイジは次の瞬間やられることになる。狩猟兵団はわりと恨みを買う職業。なので今の世の中、いくら過剰なまでの治安体制が敷かれているとはいえ、決してありえないとはいいきれないのだ。

(――仕方ない。ここは打って出るしかないか……)

 それゆえにレイジは先に行動することにした。一歩後ろに下がると同時にすぐさま姿勢を低くして振り返り、相手の方向に向かってナイフを振りかぶろうとする。当てるつもりはなく、直前で止める気だった。

 戦いにおいての技術はエデンでの戦闘経験で十分身体にしみついており、たとえ現実であろうともある程度なら同じ動きが可能。なのでレイジの動作はまさに一瞬の出来事。いくら相手が凄腕でも決して遅れを取るはずがない。

 しかしレイジが振り返って目にした光景は、スカートのポケットから手に収まるぐらいの小型拳銃を慣れた手つきで取り出し構える、赤い髪の制服を着た少女の姿。この瞬間レイジは負けをさとり動きを止めるしかない。

 なぜなら少女の動きはあまりにも早く、完璧といっていいほどの銃さばきだったから。どう見ても幾多いくたの戦場を駆け抜けた者だけができる技量であり、それが意味するのはレイジと同じく凄腕のデュエルアバター使いということに。条件が同じなら武器の性能上、かなり分が悪いのは目に見えていた。

 結果レイジは、謎の少女に小型拳銃を向けられる状況におちいってしまう。

「うわー、危ない、危ない! さすがはあの有名な久遠くおんレイジさんですねー。あと少しでも反応が遅れていたら、やられるところでしたよ!」

「――あんた何者だ? その銃さばき、ただ者じゃないだろ」

 赤い髪の少女はほほえみながら、フランクに話しかけてくる。そこには敵意や殺意はなく、なにげない会話を楽しんでいるようであった。しかしその小型拳銃を構えている姿には、まったくの隙がない。おそらくレイジが少しでも危害を加えるようものならば、慣れた手つきですぐさま引き金を引いてくるのだろう。



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