第4話

 そこで問題となったのが、ソーラーパネルが損壊した内場村である。命をつなぐために最も重要な水が、待てど暮らせどやってこない。やむを得ず、汚染を承知の上で生活に利用し始める者が出始めた。テレビとラジオ、それにたった一社の新聞しかないサヌキでは情報もろくに回って来ず、ネットがないから意見交換も闊達かったつにできない。政治・行政に対する区民の不満は、日に日に募っていった。


 特に若い区民の間では、現在の陣営ではなく新しい政治・行政の体制を築く必要があると考える向きが強まっていった。支持を得られなくなったサヌキ特別区長官は辞職し、代わりに政治を変えうる期待の新星として選ばれたのが、大西氏である。彼は就任直後からその高いポテンシャルをいかんなく発揮し、他地域との水供給に関する合意文書を早急に取りまとめた。ため池の水質汚染についても、他地域から技術者を招致し改善計画を策定するという、前長官が二カ月かかって解決できなかったことを三週間で実行した。


 このように、閉塞的状況を恐るべきスピードで打開した大西氏であるが、その性質はどのようにして育まれてきたのだろうか? 筆者は氏の経歴を追ううちに、高校卒業後の県外への移住が一つの大きな転機であると推察した。そこで今回は、氏の出身高校である農開学園を訪問し、中でも県外への移住を勧めた理事長・黒川氏を訪ねることで、氏のルーツや目指すものについて探ろうと決意した次第である。

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