トップの顔

べてぃ

第1話

 サヌキ特別行政区の南部、港南こうなん。その一部、台地上の地形の上に、ひび割れたアスファルトで舗装された区域がある。旧高松空港である。以前は県外行きの定期便が、多いとは言えないまでも、それなりの頻度で発着していたようである。特別行政区になって以降は閉鎖され、専ら災害用の支援基地として保存されているに過ぎない。


 チャーターした小型機で降り立った筆者は、かつてのターミナルビルの一角にある喫茶店に入った。名前を告げると奥の席に通された。そこには、既に一人の男性が座っていた。

「やあやあ、わざわざこんな所までありがとう」

 彼こそが今回の取材対象、農開のうかい学園の初代理事長、黒川氏である。特別行政区になる前、即ち香川県と呼ばれていた頃を知る、地元の教育者である。多くの人が知っているように、昨年末からサヌキ特別行政区では、開放と情報公開を求める運動が、若者を中心に高まりつつある。それを受け退陣した前行政長官に代わり、期待の新人、大西氏が改革の陣頭指揮を取っている。


 本連載では、彼に縁の深い人を全四回に渡って紹介していくことで、あまり公にされることのない氏の本質に迫っていくことにする。一回目の今回は、彼の母校である農開学園の創始者、黒川氏を紹介する。

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