嘘告されたので一回振ってから嘘告し返したら何故かオッケーされたのだが

嘘告されたので一回振ってから嘘告し返したら何故かオッケーされたのだが

作者 恋狸

https://kakuyomu.jp/works/16816700426314252416/episodes/16816700426314276432



 嘘告白されて不快になる事を知ってもらうべく一度振って嘘告白し返すも学校一の美少女雛倉楓夏と付き合うことになる七瀬の物語。



 作品内容がわかる、長いタイトルがつけられている。

 カクヨムをはじめとするネットで発表される作品は数が多いため、不特定多数に読んでもらうには工夫が必要。内容がわからないものよりわかっている方が読んでもらいやすいこともあるので、読んでもらおうとする作者の工夫が、タイトルから感じられる。

 ただ長い、だけではない。

 タイトルは問いかけで、その答えは読んでもらうとわかりますよとなっているところが良い。


 基本、主人公の実況中継のような状況説明で語られた文体。なので、説明が多く描写がすくない。

 場所は学校らしいけれど、主人公は小学生なのか中学生なのか高校生なのか、大学生かもしれない。ひょっとすると、主人公は教師かもしれない。

 教師だったとしても、読めなくもない。

 雛倉楓夏が美少女ともてはやされる理由も彼女の容姿の描写もない。

 告白する場所も、「放課後の校舎裏」で西日が差し込んでいることくらいしかわからない。西日が差し込んでいる校舎裏が「告白する場所としてはこれ以上ないらしい」理由がよくわからない。校舎裏のどのへんにいるのだろう。

 西日が差し込んでいるのが見えるということは、西側に遮る建物などがあってはならないし、校舎が「西日が差し込んでいる」とあるのだから、主人公は西を向いていて、彼の正面に雛倉が立っている。だとすると、相手の表情は見えづらいとおもうのに、「雛倉さんは、表情が抜けて真っ白になった」のがわかる。

 このあたりから季節を考えてみる。

 晩秋や冬だと、表情が真っ白になるのはわかりにくい。

 一般的に、付き合うことになる月は四月と七月が多いといわれる。理由は、新学期や新年度などで新しい出会いが多いのが四月で、七月はデートを重ねていったタイミングからの場合と、夏のイベントの勢いからだという。

 本作は嘘告白。なので、出会って間もない四月とは考えにくく、七月より前辺り。クラスメイトの顔も名前だいたい把握できた五月か六月くらいが、妥当ではないかと推測する。

 その頃なら、日没は午後七時近い。校舎裏に呼び出された放課後の時間、日はかなり高いはず。なので、西日が差していても雛倉さんの顔色がわかったのだ。

 たとえ、二人が東西ではなく南北に向き合っていても表情はわかっただろう。

 

 主人公七瀬は、学校一の美少女ともてはやされる雛倉楓夏が、友人たちとのなにかしらの罰ゲームによって告白してくることを事前に知っていた。

 どこで知ったのかが言及されていない。

 友人が「七瀬くん」と言っているところからも、おそらく七瀬と雛倉は同じクラスなのだろう。休み時間、あるいは昼休みの教室で話しているのを聞いたのかもしれない。

 嘘告白させて相手の様子を覗き見にして楽しむという幼稚で悪質な風潮は、昔からあり、いまではLINEで嘘告白するまでに発展している。それはともかく、嘘告白は相手を人間不信にさせるもので、なにも楽しいことはない。

 だからこそ当事者である主人公の七瀬は、いくら美少女の雛倉だろうと、純情を弄ぼうとする彼女に対して「溜飲が下がらない」のであり、「一回振って、僕が嘘告して、不快な気持ちを知ってもらえばいいんだよ‼」と行動するのだ。

 この辺り、作者の言いたいことなのかもしれない。


 一度振ったあと、校舎に呼び出して嘘告白する際、古典的方法の手紙で雛倉を校舎裏へと呼び出している。このとき、手紙はどうやって彼女に渡したのだろう。人づてか、直接か、雛倉の机や鞄の中に忍ばせたのか。

 人づてだと、「七瀬くんも彼女に気があるんだ」みたいに第三者に勘ぐられるかもしれない。嘘告白をしかけるのだから、なるべく勘ぐられたくはないだろう。

 直接渡せるなら、人目を避けてその場で言ったほうが楽だし物証が残らない。

 彼女は学校一の美少女なので、常に取り巻きがいると思われる。人目を避けることが出来なくて、手紙を選んだのだろう。LINE等SNSを使わなかったのは、嘘告白だから履歴が残したくなかったのではないか。

 手紙を彼女の鞄や机などに忍ばせなかったのは、手紙にいつ気づいてもらえるのかがわからないからだ。

 彼にははじめから、手紙を書いて彼女に直接渡す方法しかなかったはず。

 それよりも、彼は彼女からの嘘告白をされるとき、どうやって校舎裏へと呼び出されたのだろうか。素直に考えるなら、彼女は「告白も勇気が出せなくて」といっているので、彼女の友人に頼んで彼を校舎裏へ来るよう伝えたのだろう。


 主人公の七瀬は嘘告白した件について、きちんと話している。ここは彼の性格が現れているところだろう。そして、「告白も勇気が出せなくて、友達に建前をもって肩を押してもらった」と打ち明ける雛倉も、ようやく性格が見えてくる。

 いままでの関係性が崩れていくときに人の本性が現れる、という点がラストに来ることで、ちぐはぐだったことが一つにまとまり、二人はこれからはじまっていきそうな形で終わる。

 読後がいいとおもいました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る