第13話

『サイダー・ワールド』はヒットした。

 しかしその突然のヒットに曲を作った僕、奏でさえついていけていないと言うのが本音だった。他の二人も同じだろう。

 そこに更にスタジオゴーストでのライブ。1ヶ月前までは考えられなかった。


 どうするべきなのか、考えに考えた。ここでライブをやったら、やらなかったら、どうなるのか。

 確かに曲は良いかもしれない、そこに自信はある。しかし演奏技術はどうか。まだまだ初心者の域である。でも、こんな機会は二度とないかもしれない、、、



 5分程沈黙が続き、僕は口を開いた。

「やってみない?」

 二人は驚いた表情をする。

「こんな機会二度とないかもしれないし、僕らの演奏を求めてくれている人がいるってことじゃん。確かに演奏技術でお客さんをがっかりさせてしまうかもしれないけど、まだ時間はある。やるだけのことはやって、挑戦してみない?」


「うん、チャレンジしてみる価値はあるかも。失うものなんて何もないし、ね!」

 琴葉も納得してくれたように見えた。

「失うものは何もない、確かにそうだな。やるからにはお客さんを俺らの音でぶっ倒そう。」

 瑞季の瞳の奥の闘志に火がついた様だ。



 3人の意見は固まった。

 そこからは練習量が桁違いに増えた。3人の連絡の頻度も上がり、絆が深まっているという実感があった。


 本番までの2ヶ月はあっという間に過ぎていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る